コロナ禍の支援策で企業倒産が減る中、医薬品小売業者の倒産が増える理由
コロナ禍における調剤薬局の倒産増加の要因として、通院による感染リスクを警戒した各医療施設への通院患者の減少が挙げられる。実際、令和2年度の調剤医療費(電算処理分)は7兆4987億円で対前年度比2.6%減少、処方せん枚数は同9.2%減少となり、とくに0歳以上15歳未満の層を中心とした減少が目立った。子供の感染を警戒した親が通院を控えさせたわけだ。中でも小児科や耳鼻科などでの減少率が高いといわれている。
総合病院の近隣ではなく、小児科や耳鼻科を専門とするクリニックの専属的なかたちで営業を続けてきた調剤薬局のダメージは計り知れない。今後は、ワクチン接種率の上昇と感染者数の減少で通院による感染を警戒する人は減少していくことが考えられる一方、当面続くとみられるマスクの着用と感染防止策や第6波の発生による患者数の減少も考えられ、流動的な経営状態を強いられることになるだろう。
裁判所が介在し債権がカットされる倒産(法的整理)とは異なるかたちで事業を終える「休廃業・解散」の動向にも注目だ。休廃業・解散は原則として借入金や買掛金といった負債を完済したうえで事業を終了させるケースを指し、原則として取引先に未回収金は発生しない。しかし、事業を停止した背景には業績悪化、後継者不足など何らかのマイナス要因があったことが推測され、業界動向を知るうえでは倒産動向と比較しながら分析する必要がある。
医薬品小売業者の休廃業・解散の件数は19年、20年ともに165件で推移。21年は9月までに134件が確認され、同期間の倒産件数の5.0倍となっている(図表❷)。年換算すると180件前後のペースで、このまま推移すれば16年以降で最多となる。今後は、医薬品小売業者の倒産件数と連動した動きを見せる可能性が高い。