「ダイヤモンド・チェーンストア」誌が毎年発表している「日本の小売業1000社ランキング」。2021年の日本の小売業売上高ランキング1000社の総売上高は対前年比1.8%減、昨年より約1兆4000億円減少し77兆6401億円だった。小売業の総売上高が減少したのは11年ぶりである。新型コロナウイルスの感染拡大はあらゆる業界に影響を及ぼしているが、小売業界では業態によって明暗が分かれる格好となった。
CVS3社は減収もトップ3を維持
売上高ランキング上位の企業を見ると、第1位はセブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)、第2位はファミリーマート(東京都)、第3位はローソン(東京都)と、昨年に引き続き大手コンビニエンスストア(CVS)3社がトップ3を占めることとなった(注 CVSの売上はチェーン全店売上高)。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響によるオフィス立地店舗の売上減などにより、CVS業態の20年度の業績は落ち込んでおり、3社のチェーン全店売上高はすべて減収という厳しい結果となった。21年度ではCVS各社の売上は回復傾向にあり、21年7月の既存店売上高対前期比は、セブン-イレブンが2.7%増、ファミリーマートが6.5%増、ローソンが4.6%増と、復活の兆しが見え始めている。
第4~9位までの顔ぶれは昨年と変わらず、衣料品専門店最大手のファーストリテイリング(山口県)、総合スーパー(GMS)最大手のイオンリテール(千葉県)、家電量販店最大手のヤマダホールディングス(群馬県)、GMS業界2位のイトーヨーカ堂(東京都)、ドラッグストア(DgS)のウエルシアホールディングス(東京都)、ツルハホールディングス(北海道)となった。第10位には、16カ月の変則決算のため大幅に売上を伸ばしたユニー(愛知県)が昨年のエディオン(大阪府)に代わりランクインした。
業態別に総売上高を見ていくと、主要10業態のうち、SM、DgS、家電量販店、ホームセンター、生活協同組合(生協)、ディスカウントストアの6業態が売上を伸ばした。いずれもコロナ禍による特需の影響を受けた業態だ。全業態の総売上高に占める業態別シェアでは、これら6業態にGMSを加えた7業態が昨年よりも伸長した。一方、コロナ禍で大きな打撃を受けた業態もあり、20年度は百貨店企業の多くが最終赤字となっている。
生協が最も高い伸び率を記録
SMの総売上高は17兆4186億円で、前年から6.6%増加。1000社ランキングに入ったのは昨年より22社増えて321社だった。前年と比較可能な319社中、増収だったのは248社と大半の企業が業績を伸ばしている。さらに増収・増益の両方を達成したのは159社となった。過去最高業績となった企業も散見され、まとめ買い需要や巣ごもり需要が高まったコロナ禍ではSMが大きな追い風を受けたことがよくわかる。
コロナ禍で今は潤っているSM業界だが、高齢化や人口減少によるマーケット縮小、ECを含めた異業態との競争など、各社の成長を阻む懸念事項は多い。デジタルトランスフォーメーションや既存店の活性化、消費者のニーズの変化に対応した商品開発などにコロナ禍で得た潤沢な資金を投資し、アフターコロナに備えることが求められる。
すべての業態の中で最も売上の伸び率が高かったのは生協だ。総売上高は対前年比10.8%増の2兆7209億円だった。コロナ禍ではSMと同様、店舗では食品や日用品などの生活必需品を取り扱うほか、需要が高まった宅配需要を取り込み、ほぼすべての生協が売上を伸ばした。1000社ランキングに入った51生協のうち48生協が増収を果たしている。
エイチ・ツー・オーとオーケー、関西スーパー争奪戦へ
今回のランキングは、コロナ禍で好調な業態、不調な業態の格差を鮮明に表すかたちとなった。しかし、今後ワクチンの普及が進み、コロナ禍が収束すれば、再び大きな順位の変動が起こるかもしれない。また、よりいっそう厳しくなる競争環境のなか、上位企業を中心に生き残りをかけたM&A(合併・買収)もあり得るだろう。21年8月末には、百貨店のほか阪急オアシス(大阪府)やイズミヤ(同)などのSM企業も傘下に持つエイチ・ツー・オーリテイリング(同)が、同じく関西圏を地盤とするSMの関西スーパーマーケット(兵庫県)と経営統合することを発表した。これを受け、9月3日にはオーケー(神奈川県)も同社を子会社化する意向を示している。
本特集では、売上高のほか、売上高純利益率、自己資本比率、従業員1人当たり売上高などのランキングを業態別に記載している。各業態の現状や今後の業界展望を読み解く際の参考にしてほしい。
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