この連載では毎月、気象庁の発表する「3か月予報」の中で“最も未来”(3カ月目)の予報をベースに、ウェザーMDの実践方法を紹介していきます。今回は、気象庁2021年1月25日発表の「3か月予報」をベースにした、2021年4月のウェザーMDのポイントを解説します。流通小売企業に関わる皆さまの、計画立案の参考になれば幸いです。
2020年4月の天候
まず、前年(2020年)4月の天候を振り返ります(図表①参照)。20年4月は、中旬前半と下旬前半に強い寒気が流れ込んだ影響で、全国的に気温が平年より低めでした。月間気温が平年を下回ったのは北日本で2019年11月以来5カ月ぶり、東~西日本では2019年7月以来9カ月ぶりでした。
日照時間は、低気圧の通り道になることが多かった東北地方でやや少なめでしたが、それ以外の地方は移動性高気圧に覆われやすく、記録的に多めでした。一方、活発な雨雲を持った低気圧が日本付近を通過して何度か大雨をもたらしたため、降水量も九州を除いて多めでした。東京を含む5つの気象観測所では4月歴代1位の降水量となりました。
2020年4月の、特筆すべき天気に関する出来事は図表②のとおりです。客足、あるいは販売動向に影響していると思われるものもあります。実績データの検証をされる際、あるいは前年のデータをもとに今年の予算を立てる際など、参考になさってください。
2021年4月の予報
次に2021年4月の予報のポイントをまとめます。4月の気温は図表③のように、
・北日本(北海道、東北地方)では平年並か高め
・東日本、西日本では平年並だがブレるとすれば高温方向に
・沖縄・奄美地方では平年並
という予報になっています。
降水量は近畿以西の太平洋側で平年並か少なくなる可能性が示唆されていますが、基本的には全般におおむね平年並という前提で計画を組んでいただくと良いかと思います。
2021年4月、ウェザーMD上のポイント
まず、例年の4月の天候の特徴を、キーワードとともに解説します。
キーワード①:花冷え
4月の中でも、とくに上旬は上空寒気の影響を受けやすい時期です。この時期の低温を、桜の花が咲く頃の冷え込みということで、「花冷え」と表現することがあります。例えば東京であれば「終雪(シーズン最後の降雪機会)」の平年日は3月10日前後ですが、7~8年に1度程度の頻度で4月にも雪が降ることがあります。
キーワード②:初夏日
中旬以降は、時折太平洋高気圧の勢力が日本列島近くまで拡大し、夏を思わせるような暑い陽気になることがあります。最高気温が25℃を超える日を「夏日」と言いますが、その年初めての夏日を記録しやすいのもこの4月です。
キーワード③:気温の日較差
冬の主役である上空の寒気と、夏の主役である太平洋高気圧が、日本付近で勢力を拮抗させるため、朝晩は冬のような冷え込み、日中は夏のような暑さといった具合に、朝晩と日中の気温差(気温の日較差)が1年の中でもとくに大きくなりやすいという特徴もあります。
キーワード④:爆弾低気圧・強風
一般に、地域によって強風の吹きやすい季節があります。2~4月は、冬の空気と夏の空気が日本付近で激しくぶつかる時期にあたり、ほぼ全国的に強風の吹きやすい季節です。
以上のキーワードを踏まえ、長期予報の内容に基づき、今年(2021年)4月のウェザーMD上の注意点をまとめます。
2021年4月の注目カテゴリ
以上のポイントを踏まえつつ、4月の注目すべきカテゴリのうち2つを代表例としてデータとともに示したいと思います。
①焼き肉のたれ
気温が上昇する2~7月の期間に絞って焼き肉のたれの購入数データを時系列で並べたとき、5月の大型連休を含む週までは、気温とともに購入数が上昇する傾向が確認できます。一方、大型連休後は購入数がほぼ横ばいの状態が続き、相対的に気温との関係性が弱くなるように見えます。
大型連休に向けて照準を合わせるのは基本ですが、気温と絡めた販促の強化によって、大型連休までの期間の購入数をさらに高めることができるかもしれません。具体的には。アウトドアレジャーでの消費がより増えると見込まれる、晴れて気温の高い週末です。週間予報で週末晴天かつ高めの気温が予想される場合にはビッグセールスのチャンスととらえていただくとよいでしょう。
②ビネガードリンク
次に注目したいのは、近年人気が高まる「ビネガードリンク」です。春から夏にかけての味覚の特徴として、酸味や辛味を好む傾向があります。秋から冬は体を温めるため炭水化物の甘味を好む傾向がありますが、春から夏はその逆です。甘味はやや敬遠しがちになり、かわりに酸味や辛味への関心が高まります。
また、これから湿度が高くなる季節を迎え、雑菌が繁殖しやすくなるため、殺菌効果を期待したニーズの高まりととらえることもできるでしょう。「ビネガードリンク」は、図表⑤に示したように、2019年と2020年で購入数が伸びる温度がやや異なりますが、いずれにしても気温が高いほど購入数が多くなる法則であることがわかります。25℃前後の温度帯のときは15℃前後の温度帯の時に比べて買物指数が2倍近い値となります。
今年(2021年)4月は2019、2020年に比べて気温が高めとなる可能性が高い予報のため、この2年間のデータよりもさらに高い購入数を期待したいところです。
4月は、夏物商戦の本格スタートとなる重要な時期です。予報は夏物商戦にとっては追い風の内容となっていますので、是非、昨対比で積極的な目標を立てていただきいと思います。
※抽出データ
株式会社True Data「ドルフィンアイ」(業態:スーパーマーケット)に搭載されている週次の買物指数(来店者100万人当たりの売上の意味を示す独自の指標)。抽出期間は2019年1月7日~2019年8月4日および2020年1月6日~2020年8月2日(データ抽出日:2021年1月12日)。
(全国食品スーパーマーケットのPOSデータをもとに統計化した購買データで集計しています。データには店舗・個人を特定する情報は含まれていません)
※ご利用にあたっての注意事項
ここで掲げた注目アイテムは、長期予報の内容に基づいてピックアップしたものです。実際の天候が予報と大きく乖離し、ここで着目したような販売動向にならない場合があります。また、気象要素と購入数の関係から求めた需要予測モデルによる需要シミュレーションですので、気象以外の大きな要因による販売動向の影響は含まれていません。