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EC・海外・国内好調で売上過去最高、大幅増益 アダストリアの22年度決算分析

アダストリア(東京都/木村治社長)の2023年2月期連結決算は、売上高が対前期比20.3%増/前期から409億円増の2425億円、営業利益が同75.4%増/同49億円増の115億円、当期純利益が同53.3%増/同26億円増の75億円だった。2期連続の増収増益で、売上高は3期ぶりに過去最高を更新した。

好調のECは売上高構成比28.7%に!

 昨年12月29日の第3四半期決算発表時の見通しと比較すると、売上高はほぼ想定通り、営業利益は▲9億円、純利益は▲6億円だった。これは1月18日に発生したシステム停止に伴う利益逸失が影響した。外部からの不正アクセスのため物流システムが10日近くにわたり止まり、店舗では在庫不足に伴う機会損失が生じ、ECは一時停止に追い込まれた。

 「グローバルワーク」をはじめ、「ニコアンド」「ローリーズファーム」など多彩なブランドを抱えるアダストリア。主たる取り扱いアイテムはアパレルだが、近年は雑貨にも注力するほか、22年2月にはハワイ系レストラン「アロハテーブル」などを運営するゼットン(東京都/鈴木伸典社長)を買収、外食事業にも手を伸ばす。アパレルの枠にとらわれず、多様なライフスタイルを消費者に提供するために、マルチブランド戦略だけでなく、カテゴリーの拡大にも力を注ぐ。

 チャネル別の売上高はリアル店舗のウエートが高いが、近年はWeb事業の比率が高まっている。コロナ禍に伴う巣ごもり・外出自粛によって、それまで2割弱だった国内EC比率は28.7%(対国内売上高構成比、2023年2月期実績)にまで高まった。

 エリア別売上高では、国内売上が全体の9割以上を占める。海外は香港・中国・台湾・北米をカバーするものの、海外売上高比率は7.4%にとどまっている。

海外事業も堅調

 30年ぶりとされる物価高にもかかわらず、コロナ収束に伴い消費者のファッション購入意欲は盛り上がりを見せている。外部環境の追い風に加えて、積極的なプロモーション推進も奏功し、2023年2月期の増収率は2割を超えた。既存店売上高は対前期比12.4%増、客数(同5.9%増)・客単価(同6.2%増)とも前年を上回っている。

 業態別売上高は、すべての業態で前期実績を上回った。中核の「グローバルワーク」は2割、積極出店中の「ラコレ」は6割の増収率をマークした。

 Web事業の売上高は、同8.9%増の626億円だった。自社EC「ドットエスティ」の会員数は前期末より190万人増の1550万人に増えた。テレビCMによる誘客や他社商品を含めた品揃え拡充が会員数増につながった。

 海外売上高は、同34.9%増と大きく伸長しており、円安影響を除いた現地通貨ベースでも同15.8%増と2ケタの伸びを示している。地域別では台湾・香港・北米が好調だった一方で、長期間のロックダウンに見舞われた中国が現地通貨ベースで同6.0%減の減収となった(ただし、円ベースでは同7.5%増の増収)。

 利益面を見ていくと、円安・原材料費高騰に伴う仕入原価の上昇を在庫管理の精緻化(適時・適量・適価)、ディスカウントの抑制、販売価格帯の見直しなどでカバーしたものの売上高原価率は、前期から0.4ポイント悪化(44.9%→45.3%)した。

 販管費率は、前期より1.9ポイント改善(51.8%→49.9%)。コロナ収束により、人件費、家賃負担が増加したものの、店舗運営の効率化や増収効果で販管費率を抑制。以上の結果、売上高営業利益率は1.4ポイント改善(3.3%→4.7%)している。

24年2月期は増収増益予想!

 同日に発表した2024年2月期業績見通しでは、営業収益が対前期比7.2%増の2600億円、営業利益が同21.6%増の140億円、当期純利益が同24.7%増の94億円と増収増益を見込む。緩やかな市場環境の改善を前提としつつ、「グローバルワーク」「ラコレ」など成長ブランドの積極出店や海外エリアの成長軌道回復により増収につなげたい考えだ。

 東南アジアでの生産拡大、商品単価の見直し、ディスカウント抑制により、売上高総利益率は1.5ポイントの改善(54.7%→56.2%)を見込む一方で、積極採用や処遇改善による人件費増、マーケティング投資の拡大により販管費率は0.8ポイント悪化(49.9%→50.8%)する計画だ。