ヤマモリ 三林圭介社長、「ベンチャースピリット」で変革への挑戦を加速する
食品をエンターテインメントという価値に変える
──今後のマーケティング戦略について聞かせてください。
三林 情報過多でモノがあふれる現代社会で、「変革を起こす食品」をゼロから生み出すのは、不可能に近いというほど難しいです。けれども、すでにある価値観の掛け合わせによって変革を起こすことは可能です。
具体的には、「おいしさ」、「簡便」、「健康」、「安全安心」、「エンターテインメント」という食品製造会社の普遍的価値をどう掛け合わせるか。打ち手はいくらでもあるわけですから、社員一丸となって俊敏に動き、新商品を打ち出していきます。
──現在、力を入れている商品はありますか。
三林 22年3月に発売した「なごや丼(名古屋人が愛する丼)シリーズ」です。電子レンジで温めてご飯にかける丼ぶりの素で、名古屋の名物メニュー「台湾丼」「どて丼」の2種類をリリースしました。
というのも、名古屋にはお菓子のお土産はたくさんありますが、他のエリアの名産品のような食品の代名詞となる手土産が欲しいと考えていました。であれば、中部つまり名古屋を代表するブランドがヤマモリというイメージを醸成する上で、この戦略は合理的だと考えたのです。そんな発想で開発したのが「名古屋人が愛する丼シリーズ」でした。
テレビCMには、名古屋にゆかりのある織田信長、豊臣秀吉、徳川家康を起用することでワクワク感を引き出し、瞬間的に名古屋を彷彿とするようにパッケージは金のトーンに、金のシャチホコをあしらいました。
──どのように販促していきますか?
三林 私は広告代理店出身です。名古屋駅に降りて、なごや丼の存在を認知させ、関心を喚起し、お土産として買ってみようと思わせるための広告表現と媒体選定、そして販売チャネルを考えました。もし交通広告を掲出するならどんなアプローチができるか、といった風に物語をデザインするのです。その結果、消費者はワクワクしたり笑顔になったりします。そうした情緒を一連の販促、商品パッケージ、そして商品を通じて生み出すことで、食品はエンターテインメントに昇華していきます。
今後、名古屋の注目度は、ますます高まるでしょう。22年にジブリパークが開園、5年後にはリニア中央新幹線が開業し、名古屋駅の乗降客数は増加します。これらを追い風に、ゆくゆくはヤマモリが中部を代表する企業だというイメージを広く認知してもらえるよう努力していきます。
──最後に、トップとしてのミッションを教えてください。
三林 三林憲忠会長が4代目社長としてこの40年間命がけで歴史を残すことに挑戦し戦い続けてきたことを勘案し、この先100年続く企業としていくことです。そのためには環境変化に瞬時に対応できる組織能力が必要であり、意識改革を通じて社員のエンゲージメントを高め、ヤマモリを筋肉質の会社にしてまいります。
持続的可能性の観点から、2030年に向けた長期的なKPIを掲げ22年度より具体的な取り組みを実施しています。ヤマモリのDNAである「変革への挑戦」を“倍速”で強化していきたいと考えています。
ヤマモリ企業概要
創業 | 1889年 |
売上高 | 263億8000万円(22年3月期) |
本社 | 三重県桑名市陽だまりの丘 |
代表者 | 代表取締役会長:三林憲忠 代表取締役社長執行役員:三林圭介 |
資本金 | 4億3500万円 |
従業員数 | 763人(22年3月末) |