ヤフー株式会社
データソリューション事業本部
クライアントソリューション部 部長
新庄 匠 氏
ヤフービッグデータの活用事例
データ活用、DXという言葉は広がっているが大半の企業がこれから成果を出していく領域だと考えている。データ利活用における日本企業の3大課題は、データ取得に関する技術の不足、自社データ量の不足、データを扱える人材の不足がある。
顧客理解のためにはweb接点から見える行動データが重要なタッチポイントとなる。ヤフーでは約100のサービスを展開しており、ログインID数は年間約8000万人に上る。このビッグデータを活用したソリューションについて説明する。検索データを使い、市場・ユーザーニーズを把握する①ペルソナ分析 ②デスクリサーチに加え、人流データを活用した③施設来訪者分析を紹介する。
商品開発を行う際、ターゲットユーザー像をつかむ例として、大豆ミートに関する調査を元にしたペルソナ分析を紹介する。基礎分析ではヤフーユーザーの検索キーワードの伸び率および関心層分析を行う。利用データはヤフージャパン内で検索されたキーワード、検索人数の実数を元に一定期間集計。一定回数以上検索した人を関心者と定義。推定属性として女性の30代~50代が抽出された。さらに特徴や行動特性別にクラスタリングを行い「おしゃれ」、「食健康」、「ダイエット」など機械的に10のセグメントを抽出。
例えば「子育て奮闘中ママ層」というペルソナでは、「簡易レシピを求め、大豆ミートに興味はあるが完全な置き換えには至っていない」という特徴が検索特徴ランキングや検索行動によって浮かび上がる。別の「思想共感層」のペルソナでは、ヴィーガンやオーガニックなどの思想に共感を持ち、日常的に生活全般でオーガニックなものやサービスに触れ、調べていることが判明した。
この分析手法は商品開発の際に役立つ。例に挙げた大豆ミートの場合のように、プロモーション・マーケティングを展開するとき、どのセグメントのどこを狙い、どう施策を打ち出すのかという意思決定に分析結果を活用することができ、コラボ先企業への様々な提案に生かすことができる。
検索データから市場動向やニーズを深堀できる
次に「DS.INSIGHT」というデスクリサーチツールを使う事で取得可能なデータと、活用方法をデモンストレーションで紹介する。画面上のPeople・Place・Personaの中からPeopleをクリックし「クリスマス」を入力すると、クリスマスと一緒にユーザーがヤフー上でどのようなキーワードを検索しているのか、キーワードマップが表示される。円の大きさが検索数の多さ、色は性別、線はAND・OR検索がビジュアル化されており、直近1週間分が表示される。
例えば「飾り」の円をクリックすると検索人数4700人、男性15%、女性85%が分かる。ランキングも表示でき、前週比、前年度週比なども見られる。時系列キーワードの抽出で、何かのキーワード検索した前後にどのようなキーワードを検索したのかも分析できる。
活用方法としては、店舗でのイベント準備、商品の取り扱い、年代性別にどのようなメッセージで訴求するのかという検討や、自社商品と競合商品との比較に加え、地域別や年代別など、過去4年間分のデータも可視化できる。コロナ禍で人々の行動が変化している中で、キーワード検索を基に様々な動向や比較が可能になる。
店舗来店者を4つの切り口で可視化する
最後に、人流データを使いながら、施設来訪者分析を行うツールを紹介する。デスクリサーチツール「DS.INSIGHT Place」に直近、実装された機能だ。
たとえば、「西友 三軒茶屋」と入力、クリックすると地図画面上に西友三軒茶屋店が表示され、そこに訪れている人達の性別、年代別、来店頻度、商圏エリア(居住エリア)、店舗外行動サマリーを可視化することができる。時間×日別の来店者推移や来訪者が普段よく検索するキーワードも見られる。ある小売企業ではこの施設来訪者分析機能を使って、自社店舗と競合店舗における商圏領域の重複や、性別・年代別の違い、リピーターの割合を分析して、店舗の顧客像の理解を深めている。
これまでの話しをまとめると、①想像より身近にデータを使い顧客理解ができる環境が整っている ②変化の激しい世の中において、顧客の「行動パターンやニーズも常に変化するためリアルタイムに把握することがより重要である ③自社保有データ+外部データ、勘と経験+ファクトデータ、これらが顧客インサイトの深化につながっていく、ことがポイントになる。流通業界の皆様には、ぜひ無料トライアルを活用し、ご利用いただきたい。
※このレポートは2022年11月29日に配信した「DCSオンラインカンファレンス」の講演内容をダイヤモンド・リテイルメディア流通マーケティング局がまとめたものです。