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第110回 ショッピングセンターの「同質化」が必然である理由

西山 貴仁 (株式会社SC&パートナーズ代表取締役)
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ショッピングセンター(SC)は「どこに行っても同じテナントばかり」と言われて久しい。確かにどのSCも同じテナントが並ぶ。では、この「同質化」と呼ばれる理由を、SC側、テナント側、消費者側、それぞれから見ていきたい。

zhudifeng/istock
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テナントがSCへ出店するコスト

 SCへの出店には、コスト(金額、時間、手間)が掛かる。出店候補SCの探索に始まり、SC担当者との交渉、定期建物賃貸借契約、内装設計指針に基づく内装設計、B工事調整と内装工事、什器搬入に商品調達、店舗スタッフの採用とトレーニング、これらを経てSCのルールに従って開店に至る。

 資金も敷金、B工事費、開業販促費、内装監理費、現場共益費などSC特有のものや賃料、共益費、販促負担金、クレジット手数料、CAT端末料など、営業に係る経費は多岐にわたる。

 結果、路面店出店に比べ手間も費用も増すが、それに見合うメリットもあり、テナントは出店を判断する。

 テナントがSCに出店する主なメリットは次の通りである。

  • 出店場所の探索:路面店と異なり、SCは商業用不動産として店舗用区画が用意されている。
  • 出店者の類似性:路面店では、今の隣接店舗が続く保証は無く、いつどのような店舗がやってくるのかコントロール不能である一方、SCでは類似の店舗が継続される。
  • SCの集客力:SCには一定の集客力があり、販売機会が大きい。
  • 安心安全:SCは保安、防災、空調など安心して店舗の運営を行うことが出来る。
  • 店舗サポート:売上金管理、釣り銭準備、クレジットカード等の経理系、店舗スタッフの研修や懇親会などのコミュニケーション系、売上改善や販促活動による営業系など店舗サポートがSCでは行われる。テナント本部から遠く離れた店舗は、このサポートによる安心感は高い。

テナントの出店ノウハウ

 SCへの出店は、出店場所の探索から交渉など情報量や人的ネットワークや経験などのノウハウが必要とされ、自ずと経験豊富なテナント企業が強くなる。

 たとえば、出店したいSCの担当者を知っているか否かで交渉の時間コストは軽減する。既知の担当者であればメール1本で済むが、知らなければ紹介者を立てたり、専門業者に委託したり、相当の費用と時間を必要とする。そして、SCの担当者とようやく会い、「はじめまして」から始まる出店交渉は必然と長くなる。

 しかし、それまでの関係性や実績があれば交渉にかかる時間コストは軽減されるため、ナショナルチェーンには専門部署(店舗開発部)や担当者が置かれる。

 こうしたテナント側の状況は、そのままSC側にも当てはまる。

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記事執筆者

西山 貴仁 / 株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。201511月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒

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