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カスミ、身だしなみ基準の緩和がもたらした「意外な効果」とは?

2024/12/02 05:55
阿波 岳 (ダイヤモンド・チェーンストア編集者)
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基準緩和が従業員の身だしなみ意識の向上に寄与

 身だしなみ基準の緩和後、従業員からは「髪型が自由になり、仕事へのモチベーションが高まった」「ほかの従業員とのコミュニケーションが増えた」「ヘアスタイルをきっかけにお客さまから声をかけていただく機会が増え、接客が楽しくなった」といったポジティブな意見が寄せられている。また、60歳以上の従業員からは「入社時に禁止されていたピアスをようやく開けられる」といった声もあったという。

 一方、社内では基準緩和によりお客からのクレームが増えるのではないかと懸念する声もあがっていたが、実際に緩和を実施すると、予想に反してネガティブな反応はなかった。

 渡邊氏は「今のお客さまは、個性や多様な価値観の尊重は当然のことととらえており、違和感なく受け入れられた」と、その理由について語る。

執行役員人事総務管理本部人事戦略部マネジャーの渡邊敏幸氏

 さらに意外な成果として、髪型が自由になったことで「かえって身だしなみに対する意識が高まり、より自覚を持って身だしなみを整えるようになった」という従業員の声もあり、基準緩和が身だしなみ意識の向上につながったという。

多様性を生かした職場づくりへの取り組み

 カスミでは17年以降、ベトナムから100人以上の技能実習生を受け入れている。さらに、つくば地区を中心に全店で約200名の留学生が働いている。

 「多国籍で多様な文化背景を持つ従業員の中には、宗教上の理由でひげを剃れない人もいる。今回、身だしなみ基準の緩和ができたのはよかった」と渡邊氏は語る。今後も外国人従業員の増加を見越して、国籍や宗教への配慮を含めた基準の整備を視野に入れる。

 同社では身だしなみの緩和以外でも、個々の特技や意欲を自己申告できる「ポジティブカード」制度や、動画研修の整備なども実施し、働きがいの向上を図っている。

 今回の身だしなみ基準の緩和は、従業員の多様性を生かし、個々が主体的に働ける職場環境づくりの一環である。具体的な数値面での成果などはまだ表出していないが、それぞれが持つ個性を尊重し生かすことで、よりよい商品やサービス提供につなげていきたい考えだ。

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記事執筆者

阿波 岳 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集者

大学卒業後、社会の荒波にもまれる日々を経験。そこで書籍や会報誌の編集に携わるうちに、メディア事業への興味が芽生え、今に至る。
趣味は喫茶店巡りと散歩。喫茶店での一杯のコーヒーや、街角の散策を生きがいとしている。
これまで全都道府県を制覇するという小さな目標を達成した。何かを極めたり、制覇したりすることには、なぜか人一倍の熱意を注いでいる。
最近の悩みは、ここ数年で増えた体重との戦い。健康の大切さを意識しつつも、喫茶店のコーヒーに合わせたスイーツや、ランチの大盛りがやめられない。今日もまた元気に「大盛で!」と注文しつつ、明日こそ控えめにしようと心に誓っている。

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