買上点数は果たしてKPIとなりうるのか? 既存店売上を構成する「部分」と「全体」
既存店売上高は「車」、買上点数はその「パーツ」
ただ、部分にフォーカスすることで全体バランスを見失い、やみくもな買上点数アップ策に陥る、そんな事態もよくある話です。なぜそのような弊害が起きるのでしょうか?
仏教説話を借用して考えてみたいと思います。
ある社長さんが、運転手付きの自動車でやって来ました。社長さんに尋ねます。「車とは何でしょうか? タイヤは車でしょうか?」
社長さんは「タイヤは車ではない」と言います。ではハンドルは? 「違う」。シートは? 「違う」。運転手は車でしょうか? 「馬鹿を言っちゃいけない」。では、タイヤでもハンドルでも運転手でもない、車とは何でしょうか? と尋ねます。
社長さんは答えます。「タイヤやハンドル、運転手などの部分を統合した総体を、車と呼ぶ」。
既存店売上高にも、同じことが言えると思います。客数や客単価、一品単価、買上点数といった部分を合わせた合計数値が既存店売上高です。ですが各部分は決して既存店売上高ではありません。
だから買上点数を上げることだけにフォーカスしてしまうと、一品単価が想定以上に落ちてしまったり、価格を下げた商品が不適切で客数増につながらなかったりと、既存店売上高として見たときにちぐはぐな結果を招きかねません。

ライフ岩崎社長がバランスを重視するのは、部分と全体の関係を考えてのことでしょう。U.S.M.Hは買上点数を優先課題と位置付けますが、先に述べたように同社もすべての分解要素に目配りしており、既存店売上高を最終ゴールと位置づけています。既存店の「走り」をよくするには「パーツ」の点検が欠かせませんが、各パーツが単独で走るわけではありません。各パーツがどのように全体とつながるか、「部分」と「全体」を見渡さないと既存店の走りは改善されません。
そもそも、既存店売上高もより大きな経営数値の「部分」に過ぎません。一大セールで既存店を押し上げた結果、経費が膨らんで減益では、よい経営とは言えません。また、利益を出すことすら、社会における企業の存在意義の一部でしかありません。
部分だけで評価をするのは常に一面的ですが、では全体をとらえようとすると話はどこまでも大きくなります。だから買上点数のような部分にフォーカスする必要も出てきます。既存店を数字で分解するのはわかりやすいですが、これを改善するために何にどのように取り組むか、実際の対処はわかりやすい話ではありません。





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