コンビニエンスストアの”望ましい未来”の姿とは
前回に引き続き、未来課題解決の糸口として特定の個性(便益)の方向性を示しながら、第5回となる今回はコンビニエンスストア(CVS)の未来を「時間価値の最大化」という切り口から考察する。
CVSは利便性という提供価値を中心に小売+サービス+社会インフラとして発展してきた業態である。しかし、人口動態・技術革新・社会規制といった環境変化が、CVSのこうした強みに影響を及ぼし始めている。2035年に向けて、CVSはどのような進化を遂げるべきか。その方向性を検討する。

CVSに作用する3つの大きな環境変化
CVS業界は、即時購買・少量多品目・24時間営業を実現するビジネスモデルを武器に発展してきた。一方で労働環境・競争環境・社会環境の変化から、既存のビジネスモデルの持続可能性が危ぶまれている。具体的には、大きく3つのポイントが挙げられる。
①労働力不足の深刻化による店舗運営の限界
厚生労働省の統計によれば、小売業界の有効求人倍率はすでに2倍を超えており、30年代には深夜シフトを担う人材の確保はほぼ不可能になると推測される。全国約5万店舗に広がる24時間営業体制は、「社会インフラ」としての意義を保ちながらも、維持の限界が目前に迫っている。
②EC・AIの進化による「即時性」の侵食
経済産業省の調査によると、日本のEC市場は23年に20兆円を突破、35年には40兆円規模まで成長すると見込まれる。加えて、AIエージェントによる自動購買やスマート家電が普及すれば、「買いに行く」という動機そのものが薄れる。ラストワンマイル配送が進化すれば、CVSの伝統的な強みである「今すぐ手に入る価値」は相対的に弱まる。
③環境・サステナビリティ規制が迫るサプライチェーンの変化
政府は30年までに食品ロス半減を国際公約として掲げており、違反企業への罰則導入も視野に入れている。たとえば大手チェーンで廃棄率が1%増えるだけでも、年間数十億円規模のコスト増につながる。少量多品種・即時補充に最適化された従来型のサプライチェーンは、持続可能性の観点から再検証が必要となる。
消費者の「時間価値」を最大化するために
こうした経営課題がある一方で、
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