第123回 「営業時間統一」という常識打破に向け、SCに求められる対応とは

西山 貴仁 (株式会社SC&パートナーズ代表取締役)

休業店舗を想定した設計が必要

 上記の通り、テナントごとに個別の営業時間や休業日を実施する場合、それを前提にした設計や運営管理方針を予め策定しなければならない。

 最もシンプルな方法は、店舗区画を路面店のように外部からの出入りを自由にする外付け店舗とすることだ。テナントごとに開閉店を行い、セキュリティもテナントごとにコントロールできるようにする。また、共用トイレを長時間開けなくても済むように、各店舗にトイレを用意することも必要であり、客動線も他店の前を通らないような工夫も必要である。

 そして、休業店舗が発生しても美観上、閉鎖的な空間の発生やセキュリティ上のリスクを回避するような設計が必要である。

求められる「SCの定義への挑戦」

 この店舗ごとに営業時間を設定するうえで大切なのは、SCの経営側の意思である。これまでのテナント売上高前年比重視のSC定義を尊重するのであれば、不統一な営業(運営)の選択はなく、ハンズオンの経営を志向すべきである。

 一方で、店舗の営業時間をフレキシブルにするのであれば、HPなどの媒体のメンテナンス、休業中のセキュリティ、集合体としての協調性低下など、SCの運営管理側には負担が生じる。したがって、フレキシブルな営業時間への対応は、「テナントに言われたから」などの安易な気持ちではなく、「これまでのSCの定義に挑戦する」くらいの気概を持って設計や運営管理体制に臨むことが最も大切なことである。

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記事執筆者

西山 貴仁 / 株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。201511月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒

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