青果部門が迎える新局面……安定供給と差別化のカギは、小売起点の流通改革!
ニーズに対応した選ばれる商品づくり
では、具体的にどのような方向性で青果部門を「再構築」し、お客に選ばれる商品・売場づくりを実現していくべきか。まずは、簡便、少量、用途提案型の商品など、潜在ニーズを深掘りしながら消費者が求めている商品をつくり、それらを新たな集客の要に育てていくのが重要だ。
また、「素材の使い方」や「調理のヒント」を伝える提案型の売場づくりにより、価格に見合った価値を伝えることも求められる。
いずれにせよ、青果を取り巻く環境が大きく変化している中、“伝統的”な52週MDの焼き増しを続けていては、もはや青果部門の存在意義そのものが問われかねない状況だ。それを打破するためには、多様化する消費者ニーズに応えながら、他社との圧倒的な差別化を実現する商品づくりがカギになる。
すでにSM各社では、そうした動きが加速しつつある。たとえばサミット(東京都/服部哲也社長)では、店内加工の「インストアサラダ」を軸としたMDで他社との差別化を図る。サミットの青果部門は、10年以上前からインストアサラダを提供している。インストアサラダの最大の強みは、素材の仕入れ状況を見ながら、販売の直前でも柔軟にメニュー変更ができる点だ。
季節感を打ち出したインストアサラダのメニューでは、売場で素材として販売する旬の野菜やフルーツを使用。素材とインストアサラダを連動させ、売場で旬を打ち出している。
他方でサラダは昨今、食卓に並ぶ1品という位置づけだけでなく、「サラダボウル」のような主菜としての需要も高まっている。このニーズに対応し、サミットでも「コブサラダボウル」を開発。若い顧客層を中心に支持を集め、客層拡大にもつなげている。
アクシアル リテイリング(新潟県/原和彦社長)傘下の原信(新潟県/丸山三行社長)とナルス(新潟県/同:以下、原信とナルスの2社を原信・ナルスと総称)でも、「おいしさ」という価値をグループ全体で追求し、独自商品の開発を進めている。青果部門では、カットサラダや千切りキャベツの切り方による味の違いを研究し、店内加工にこだわることで「おいしい」商品を提供する。
また、青果部門で初となる鍋スープの開発に挑戦し、「新潟長岡風 生姜醤油鍋用スープ」を発売。異例の大ヒットを遂げ、クロスMDによる素材の販売増にも寄与した。
また、食品宅配のサブスクリプションサービスを提供するオイシックス・ラ・大地(東京都/髙島宏平社長:以下、オイシックス)も、独自の商品開発を通じた野菜の価値訴求に取り組む。
たとえば、食材とレシピがセットになったミールキット「Kit Oisix」、レンジアップの冷蔵総菜「デリOisix」で時短ニーズに対応。また昨今は、冷蔵庫内で場所を取らない大きさのミニ野菜「スペパベジ」も、単身者からの需要が高い。この「スペパベジ」は、SMで野菜を購入しても使いきれず廃棄してしまった経験のある人に寄り添い、野菜購入の再挑戦を促す商品として位置づける。
オイシックスで執行役員Oisix商品本部長を務める冨士聡子氏は「野菜のおいしさをもっと伝えていかなければいけない」と力を込める。
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