ユニクロとしまむら、フェーシング数量に見るロジスティクスと商売哲学の違い
コンビニや食品スーパーの棚に並ぶSKUごとのフェーシング数量は、欠品せず滞貨もしないよう適切に設定されているはずだが、現実には需要と乖離して過大過小なケースも多々見られる。アパレルでも「しまむら」は各1、「ユニクロ」は各1ダースをベースとするなど大差があるが、その背景には「縦売り」と「横売り」※1というMD政策に加えてロジスティクス体制の違いもあるようだ。
※1 縦売りと横売り⋯⋯同一品を備蓄補給して大量継続販売するのが「縦売り」、バラエテイを揃えて少量を蒔き切りで売り切っていくのが「横売り」

「神話」と現実は異なる
「ファッションセンターしまむら」(以下、「しまむら」として企業総体のしまむらと区別)のアパレル商品のフェーシング数量は『原則各1で中心サイズのみ各2』と業界ではまことしやかに囁かれている。だが、毎月のように「しまむら」の都内近郊店舗を見て回っていると必ずしもそうではないことがわかる。商圏人口が限られるローカルやエクサバン(農地や工場・物流施設も混じるサバブ外辺圏)の店舗では確かに「神話」通りだが、「都心店舗」(と言っても東京圏で言えば環七の外側の私鉄駅近接地)ではアパレルの中心サイズで4〜5、肌着やナイティでは6以上、パッケージ肌着では1ダースというケースも見られ、『立地の販売速度と補給頻度で決まる』という定石通りと見るべきだろう。

「しまむら」の店舗の大半はローカルやエクサバンの生活道路沿いに立地し、商圏人口は2〜3万人ほどだが、少子高齢化と若年女性の大都市圏への流出で先行きが厳しいのが現実で、人口密度の高い大都市圏のサバブ(戸建て住宅地)やアーバン(集合住宅化する再開発期の住宅地)の私鉄駅近接立地への出店を進めている。そんな「都心店舗」では、ローカル店舗の4〜5倍の客数が期待できるから、同じ補給頻度なら(全国10リージョナルのTCから毎日、ルート便が巡回するから当然に同じ)SKUフェーシング数量も4〜5倍が適切ということになる。
小島健輔のアパレル一刀両断! の新着記事
-
2025/11/25
ワコールを追い詰めた「三つの革命」 -
2025/11/04
ユニクロの「棚割り」に見るインクルーシブMDへの“覚悟” -
2025/10/21
実例に見る「危ない商業施設」の見分け方 -
2025/09/26
「ニュウマン高輪」に感じた強烈な違和感の正体 -
2025/09/08
アパレル企業が倉庫自動化の前に検証すべき「物流最適化の大原則」とは -
2025/08/22
イトーヨーカ堂「ファウンドグッド」とファミマ「コンビニエンスウエア」、明暗を分けたのは
この連載の一覧はこちら [33記事]
関連記事ランキング
- 2025-11-25ワコールを追い詰めた「三つの革命」
- 2025-12-02HUMAN MADE上場から考えるファッション産業の構造的限界
- 2025-11-27急拡大するリカバリーウエア市場を攻略する
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2025-03-12ユニクロ以外、日本のほとんどのアパレルが儲からなくなった理由_過去反響シリーズ
- 2022-04-22ユナイテッドアローズ重松理名誉会長が語る、創業秘話とビームスを立ち上げた理由とは
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2025-11-24間違いだらけのアパレルDX改革、根本から変えるべき「KPIの設計哲学」
- 2025-11-26業態別 主要店舗月次実績=2025年10月度





前の記事



チェーンストアが「お値打ち価格」と「安定供給」を両立する方法とは