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イオン北海道、中計目標達成のカギ握る西友店舗継承後の戦略

2026年2月期を最終年度とする5カ年の中期経営計画(中計)の目標に、北海道での食品シェアナンバーワンを掲げるイオン北海道(北海道/青栁英樹社長)。昨年度(24年2月期)の業績は、売上高、営業利益、経常利益が過去最高だった。中計で「成長の加速」と位置付ける25年2月期は、西友(東京都/大久保恒夫社長)の9店舗を承継するなど新たな事業展開を迎える。イオン北海道が機関投資家向けに発表した中計の進捗と今後の取り組みについてレポートする。

イオン南平岸店(北海道札幌市、イオン北海道提供)

25年2月期第1四半期は売上好調も減益に

 イオン北海道の242月期業績は、売上高が対前期比5.0%増の3331億円。営業利益、経常利益も過去最高を更新し、営業利益と経常利益は初めて100億円を突破した。ライン別の売上高でも、衣料・食品・住居余暇の全ラインで前期実績を上回っており、なかでも食品は同59%増の2706億円と13期連続の増収だった。

 直近の252月期第1四半期決算は、売上高が対前年同期比4.1%増の830億円と第1四半期の過去最高を更新。一方、営業利益は同10.7%減の15億円、経常利益は同1.2%減の16億円だった。天候不順により春物、初夏物の衣料品が伸び悩んだことや、食品の原価高騰などが影響したという。通期では売上高が対前期比5.4%増の3510億円、営業利益が同6.1%増の110億円、経常利益が同5.8%増の110億円と期初発表の予想を据え置いている。

西友の9店舗を10月に承継

 イオン北海道は、中計の最終年度となる262月期に売上高3800億円の数値を目標に掲げている。この目標達成のカギとなるのが札幌市内にある西友の9店舗の事業承継だ。事業を承継するのは西友と締結した吸収分割契約の効力が発生する101日以降。9店舗はいずれも駅近立地、あるいは高所得層が多いエリアにあり、イオン北海道の既存店舗とも競合しないという。青栁社長は、建築コストの上昇や競合店との競争が激しいことから札幌市内での新規出店は困難な状況だとして「9店舗は優良立地にある。非常に重要で価値を持っている」と期待をにじませる。

 イオン北海道が他社の店舗を承継するのは、15年のダイエー(東京都/西峠泰男社長)に続いて2度目だ。このときはイオン北海道とマックスバリュ北海道(20年にイオン北海道と経営統合)が、道内の計16店舗を承継した。今回は立地の観点などからダイエー承継時より期待値は高いとしつつも、築年数が40年を超える店舗が複数あるという課題がある。店舗リニューアルに多額の投資が必要になる可能性が高く、複数年をかけて改装を進めることになるという。

 青栁社長は、事業承継については総合スーパー(GMS)や食品スーパーなど幅広い業態で店舗展開するイオン(千葉県/吉田昭夫社長)のスケールメリットを活用しながら、札幌市内のシェア拡大と中計の数値達成をめざす考えを示した。

 その一環として、新規出店や既存店舗の活性化なども進める。中計期間中は、242月期までの3カ年で6店舗を新規出店。249月には旭川市内に、9年ぶりの新規出店となるGMSの新店もオープンする予定だ。

 また、242月期、252月期は化粧品や医薬品を充実させたフード&ドラッグの業態で出店したイオン南平岸店(札幌市)、北郷店2店舗(同)を出店しており、いずれも業績は好調だという。

 商品面では、道内で書店の撤退が進んでいることから、書籍売場の品揃えを充実させるなど、地域の実情やニーズに応じた店づくりにも取り組む。また、218月に稼働した「イオン石狩プロセスセンター」(北海道石狩市)を活用し、3カ年で総菜など約2800品目を新規に開発している。こうした取り組みで各店の売上高を伸ばすとともに、他店との差別化も図りたい考えだ。

 

地方店舗の運営に課題

イオン北海道の業績や取り組みを説明する青栁英樹社長=2024年7月25日、東京都内

 アフターコロナで経済活動が正常化し、さまざまな取り組みも功を奏したことで242月期は好業績で着地したイオン北海道。ただ、青栁社長は「お客さまの購買の動向は月を追うごとにシビアになっている。安いからたくさん買う時代じゃない」と危機感を示す。とくに第1四半期は粗利益率が高い衣料品が苦戦した。

 地域特有の事情もある。北海道は全国を上回るペースで人口が減少しており、市場縮小も進む。道内では、小売企業が道内から撤退したり、札幌市内への出店に絞る一極集中が起きているという。青栁社長は「イオンが地域のインフラとしての役割がさらに大きくなっている。収益は厳しいが、地方店舗(都市部以外の店舗)を復活させることに注力している」と語る。

 その一方で道内では、ロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)やトライアルカンパニー(福岡県/亀田晃一社長)などの有力チェーンが勢力を拡大しつつある。こうした現状を踏まえたうえで、青柳社長は「地域のアセットとしてどう生き残るかということを踏まえ、地方店舗のリバイバルを進める」とし、既存店舗のディスカウントストアへの業態変更なども含めた店舗戦略を検討していくとした。