売上アップを左右する!チェーンストア衣料品の「お、値打ち」を高める方法

小島健輔(小島ファッションマーケッティング代表)
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チェーンストアの衣料品は専門店やブランドショップの衣料品に比べると値段相応な安っぽさを否めないが、必ずしも品質が劣るわけではない。品質は負けていないのに、時代のトレンドや顧客の嗜好とすれ違ったり、陳列やディスプレイが無配慮に粗雑だったりして損をしている。もう少し顧客に寄り添ってすれ違いを解消し、見せ方を工夫して「見栄え」を良くすれば、売れ行きも違ってくるのではないか。大苦戦が続く総合スーパー(GMS)などのチェーンストア衣料品を改革する手法を、小島健輔氏が徹底解説する。

チェーンストア衣料品をどのように改革すべきか(写真はイオンモール船橋のイオンスタイルストア)
チェーンストア衣料品をどのように改革すべきか(写真はイオンモール船橋のイオンスタイルストア)

チェーンストア衣料品は「安物」か「割高」か

 チェーンストア衣料品の多くは生活圏の日常消費に応えるべく手頃な「大衆価格」に抑えられているが、品質が疑わしい「安物」というわけではない。

 もちろん、高額なブランド衣料品に比べれば使っている素材のコストは低いし、デザインやパターンが洗練されているわけではないし、縫製仕様に凝っているわけでもない。だが、素材が劣悪なわけではないし、縫製始末が破綻しているわけではない。工場、サプライヤー、チェーンストア各段階の検品をクリアしているのだからB品は外されているはずで、消費者からクレームが付くような不良品では決してない。

 「大衆価格」(Popular Priceと言ってもチェーンストアで売られている衣料品には上下2クラスがあり、どちらも品質の規範を逸脱するものではないが、その下を潜る越境EC品(途上国の市場商品)になると品質は怪しくなる。総合スーパー(GMSの平場で売られているのはアッパーポピュラークラス(「ユニクロ」価格)で、「しまむら」や「パシオス」、「パレット」などの衣料スーパーで売られているのはロワーポピュラークラスとざっくり分けられるが、この両者に品質の差はほとんどない。

 なぜなら“仕入れ掛け率が違うだけで生産原価はほとんど変わらない”からだ。

 GMS衣料品の仕入れ掛け率は小売価格の48%程度だが、「しまむら」(ファッションセンターしまむら業態)衣料品の仕入れ掛け率は小売価格の61%ほどと一回り高く、サプライヤーの値入れから推計した生産原価率はGMS衣料品の38%前後に対して「しまむら」衣料品は48%前後と10ポイントも高い。GMS衣料品で3900円の婦人パンツの生産原価は1480円ほどだが、「しまむら」で2990円の婦人パンツの生産原価は1435円ほどになるから、品質はほぼ同クラスと見て良い。もちろん、GMS衣料品にも「しまむら」にも裾値品はある。品質は一格落ちるが、裾値品同士も品質は同クラスと思われる。

 GMS衣料品と「しまむら」で仕入れ掛け率が違うのは、売り減らしの計画調達と売り足しの当用調達の需給ギャップの差に起因して、在庫回転と値引きロスの差が大きいからだ。

 GMS衣料品の平均的な粗利益率が38%前後だから値引きロス率14%前後(=52%-38%)と大きいのに対し、「しまむら」婦人衣料の粗利益率は32.4%(紳士衣料も32.6%と大差ない)で値引きロス率は6.5%に収まっている(242月期)。販管費率もGMS衣料品が36%前後に対し、しまむらは25.8%242月期の単体)に収まっており、10ポイントも差がある。GMS衣料品は値引きロスが大きい売り減らしの計画調達と非効率で高コストな運営体質の分、「しまむら」より割高な価格で売らざるを得ないのが現実だ。

 前回の『“両極端”のユニクロとしまむら チェーンストア衣料品はどちらに学ぶべきか?をご精読いただけば、GMS衣料品が何を変えていかなければならないのか、ご理解いただけると思う。

消費者の目に映る「見栄え」とVMD

 製品としての品質はもとより、売場で消費者の目に映る

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