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3年後500億円規模の売上めざす、バローHD、怒涛の関西戦略とは

岐阜県を本拠とするバローホールディングス(HD)は、スーパーマーケット(SM)、ドラッグストア(DgS)、ホームセンター(HC)など複数業態を展開する。2029年度(30年3月期)に連結営業収益1兆円超をめざす同社が次期中期経営計画(24〜26年度)で成長戦略として打ち出すのが関西強化だ。いかに関西市場を攻略するのか。

スーパーマーケット バロー店舗

バローHD、関西強化鮮明に

バローHD2311月末現在、グループで関西圏に105店舗(滋賀30、京都15、大阪39、兵庫21)を展開する。関西強化は次期中期経営計画(2426年度)における成長戦略の柱の一つだ。

 関西強化についてはすでに手を打っている。2310月、食品卸トーホーのSM子会社トーホーストアの13店舗を傘下の事業会社が譲り受けた。15年の資本業務提携以来、プライベートブランドを供給するなど関係を構築してきたトーホーと237月から協議を進めていた。

 譲り受けた13店舗のうち8店舗をDgSの中部薬品が展開する「Vドラッグ」に、そして生鮮SMのたこ一2店舗、八百鮮3店舗に転換する。八百鮮、ヤマタは21年に買収した生鮮スーパーで、店舗は小規模だが相場に応じて安価に仕入れ当日に売り切る販売手法が強みだ。関西出店にあたっては複数業態を持つことを生かし、物件規模や立地特性に応じてSMのバロー、そして八百鮮、ヤマタ、中部薬品を出店するという。

 23年10月には、関西強化のため、チルド・氷温・冷凍・ドライ食品を扱う「枚方物流センター」の新設も発表した。新センターは2410月に稼働させる予定だ。

 関西はSM業界でいま最も熱い地域の一つだ。勢いのある関東地盤のディスカウントスーパーが関西に進出し始めており、競争が激しくなっている。ロピア(神奈川県)は20年に初進出し15店舗を展開しているし、21年に関西スーパーマーケット(現関西フードマーケット)買収に動いたオーケー(神奈川県)も2411月に大阪府東大阪市に関西1号店を出店することを表明している。

 

滋賀のぞく関西の売上 3年で267億円→500億円へ

 関西強化について、228月に社長代行、236月に社長に就いた小池孝幸氏は第2四半期決算説明会で「分厚い関西市場は強者同士の戦いになる。競争の激しい市場にあえて入っていくことで新しい課題を見つけていきたい」と意気込む。現在SMのバローは、生鮮を強化して目的来店性を高めた「デスティネーション・ストア」化を推進し成果をあげており、これが関西でも力を発揮できるか注目される。バローグループの関西(滋賀県除く)での売上高は267億円(22年度)だが、これを次期3カ年で500億円規模に引き上げる計画だ。

 次期中計では収益力向上に向けてグループ連携のあり方も見直す。バローHDは、傘下のSMDgSHCといった小売に対して、卸や物流、食品製造などの機能を提供する子会社を持つ。機能子会社には売上が小規模の会社も多い。小規模会社が傘下の小売と連携し機能を提供することは難しい。そこで、卸の中部流通、物流の中部興産、設備メンテナンスのメンテックス、食品加工の中部フーズという、収益力の高い機能子会社4社を中堅機能会社として整備する。4社が小売との連携を強め、売上を次期中計の3年で1.5倍引き上げる計画だ。

 

「コングロマリットディスカウント」
との指摘に対する答えとは

 さらに、セグメント開示についても見直す。M&A(合併・買収)でグループが拡大した結果、グループの構造が複雑で成長性を評価しにくくなり、複数事業を持つ企業の価値が各事業の価値の合計を下回るコングロマリットディスカウントが生じているという指摘があるからだ。

 これを解消するため、機能子会社が属する流通関連事業セグメントの営業利益を小売各社に配賦する形に変更する。そうすると、例えばSMでは現在の営業利益率3.2%に、流通関連事業の営業利益率0.5%が上乗せされ3.7%になる。これにより同業他社との比較がしやすいようにするという。

 バローHD22年度(233月期)連結業績は営業収益7599億円(21年度比3.7%増)、営業利益200億円(同5.4%減)、経常利益230億円(同4.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益76億円(同15.7%減)と減益に終わったが、23年度に入ってからの業績は好調だ。

 上半期(4〜9月)は、営業収益3991億円(前年同期比6.5%増)、営業利益111億円(同16.5%増)、経常利益126億円(同13.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益66億円(同15.5%増)だった。SMバローの既存店売上高が前年同期から4.7%伸長したほか、DgS事業でも既存店売上高が5.9%伸長するなど売上が伸びたことで営業収益が前年同期に続き過去最高を更新。利益面では営業、経常ともに過去3番目の高水準だった。営業収益、各段階の利益は期初の計画数値を上回った。

 現中計の最終年度にあたる23年度は営業収益7720億円、営業利益205億円、経常利益233億円、親会社株主に帰属する当期純利益93億円を見込む。計画通りに着地できれば、中計の定量目標を達成することになる。

 次期中計は現在、社長直轄プロジェクトで策定中だ。小池社長は「HD本体を事業会社の後方支援にとどまらず、人事・財務・調達でグループ最適に導く形に変革していきたい」と言う。次期中計は小池社長の経営手腕を試す試金石となる。