いい店がよりよくなり、悪い店がより悪くなる!? 恐るべき個店経営の罠
「画一化」だからわかる個店ごとの違い
個店経営には、ある種の問題がある。それは、個店ごとに「いい店」と「悪い店」の格差がつく、その是正に困難がつきまとうことである。というのは、悪い店は当然に、何が、なぜ、どう悪いのかに気づくのが難しいからである(気がついていれば、それを正していただろう)。しかも個店経営の場合、それに気づく可能性があるのは個店マネジメントを実行する店舗要員本人と、スーパーバイザーくらいである。
これと正反対なのが、学校のテストである。30人のクラスでテストをしたとする。もちろん全員同じ問題で、それを5回繰り返すとしよう。すると指導者は、30人の生徒のそれぞれのいい点と悪い点、得意と不得意がわかる。指導者は生徒一人ひとりに合った個別指導ができる。「個人に見合った指導」ができるのは、全員に同じ問題を出し続けたからである。
チェーンにおいても、同じことがいえる。「チェーン理論」がいうように、マーチャンダイザーが、どの「画一売店チェーン」に対しても、同じ品揃えを命令、実行させれば、まったく同じ商圏(地理的にも、競争上も)が存在しない以上、売れ行きは個店ごとに異なってくるはずである。
チェーン理論の組織論においては、ストア・マネジャーすなわち「店長」はもっぱら店舗人員のコストダウンに励むことが職務である。品揃えにはいっさいタッチしない。としても、少なくともマーチャンダイジング本部には、個々の店舗の違いは明らかになる。同時に、「なぜそうなったか」を個々の商圏の事情(たとえば天候、競争事情、商圏人口のデモグラフィックな構成……そしてそれらの事情の変化)と対応させて(データさえ入手できれば、AIにやらせてもいい)、その理由をある程度までは推測できる。
全員に何回も同じテストをするからこそ、教師が生徒全員の個人ごとの違いを詳細に知ることができるように、全店画一的な品揃えであれば、あくまでもその「マーチャンダイザー指令に基づいた画一的品揃え」の範囲において、個々の店舗の詳細な違いとその理由を明らかにできる可能性が生まれる。ただし、個々の店舗の事情に合わせて、個店対応するとすれば、画一売店チェーンの画一化論理は、自己矛盾に陥ることになる。とすれば、その対応もまた画一的に行うしかないだろう。
個店経営と「気象予報」の関係
ところが、個店経営の組織論では、