九州で進む「共創」 ゴミ処理コストを激減させ資源にする「有価物ルート回収」の成果とは

2023/06/01 05:55
阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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人口減、コスト上昇、2024年問題……小売業のビジネスのサステナビリティを揺るがす諸問題が立て続けに顕在化している。そうしたなか、普段はライバルとしてしのぎを削る小売業同士が「非競争領域」を設定し、物流を中心に手を携えながら課題を乗り越えていこうという動きが、活発化している。九州では、物流のみならず、各社の総務部門が連携して環境、防災、防犯の3テーマで抜本的な共創に取り組んでいる。今回はその動きの一例として、「環境」の切り口で、資源循環の仕組みをつくるための実験として行われた、有価物ルート回収の取り組みの背景とその成果、今後の展開についてレポートする。

九州で進む連帯 
九州総務連合会とは

 イオン九州とトライアルホールディングスが音頭を取り「九州物流研究会」が2022年8月に発足したことは、「イオン、セブン&アイも動く!小売業に必要な非競争領域の設定と協創!『チームK』の挑戦」でも既報のとおりなので、知っている人も多いだろう。いまや業態も異なる13社が参加して、小売共同物流モデルの実現に取り組んでいる。

 しかし、この「九州物流研究会」とは全く別の文脈で、九州の小売企業同士が連帯していることをご存じだろうか。

 それが、今回紹介する「九州総務連合会」だ。

 「各社縦割りの無駄をなくし地域で健全な競争を促進!私たちが九州ばもっとよか街に!」をビジョンに、トライアルホールディングス、イオン九州、西鉄ストアなどが加盟し、共創により総務全般の業務における課題の最適化と効率化をめざす会だ。

 実は九州総務連合会は九州物流研究会よりも前、2022年4月に発足した。現在では毎月対面で会合を設けるほか、毎週各社のリーダーがオンライン上で進捗を確認し合う、極めて密な連携が行われている。

 課題解決に向け、各社が役割分担をしており、トライアルが「防犯」、イオン九州が「環境」、西鉄ストアが「災害」を担当する。

 「環境」では、共同回収による効率化、店頭回収資源の再生と製品化などを掲げ、全体で進捗を確認しながら、実行を進めている。資源循環の仕組み構築を目指すなか、産業廃棄物の共同回収も順次進めていく考えで、今回取材した有価物のルート回収は、取り組みやすさもあって、そのための実験という意味合いが強い。

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記事執筆者

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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