セールしない、余剰在庫もないアパレル「アルページュ」 会社もお客も「幸福な」理由
「インスタライブ・ECサイト・リアル店舗」を常に同期するVMD
とはいえ、トレンドの盛衰が激しいレディスブランド。セールに頼らずに高い消化率を維持するのは簡単ではない。アルページュではどのように「消化率を高め、在庫を残さない」工夫をしているのか。
そのカギはECサイト、リアル店舗双方におけるビジュアルマーチャンダイジング(VMD)の連携にある。
2012年に自社ECサイト「アルページュ・ストーリー」を立ち上げ、以降、毎月の新商品はまずECサイトで先行リリースし、その10日後に全国の直営店で販売する流れになっている。店舗で買い物を楽しむファンもいることから、ECのみで売り切ることはせず、各店舗にも在庫を振り分ける。
「店舗でショッピングするお客さまは、まずECサイトで新商品をチェックし、それから店舗に買いに行く。そのときにECのトップページで紹介している商品と、リアル店舗のショーウィンドウに並ぶ商品が異なっていたら、違和感を持つ。それでは商品の魅力が伝わらない」
そこで、ECとリアル店舗の展開する商品にズレが生じないよう、内容をタイムリーに同期させている。このシンプルなルールを徹底することが、高い消化率を実現する秘訣だ。
さらに、もう一つのポイントとして、自社Instagramでのライブ配信(インスタライブ)が挙げられる。
インスタライブは、コロナ禍を機にアパレル業界で広く浸透し、それ自体に目新しさはない。しかし、その後トーンダウンした企業も少なくない中にあって、アルページュでは専用のスタジオで「1ブランドあたり週に4、5回。全ブランドで週20本」というきわめて高い頻度で配信を続けているのだ。
そして、ここでもインスタライブで紹介する商品がECで紹介する商品と必ず連動するようにVMDを徹底している。
「お客さまがインスタライブを観た後は、必ずECサイトを訪れる。その時に、インスタライブで紹介した商品が出てこないと離脱につながってしまう」
「インスタライブ→ECサイト→リアル店舗」の3つの顧客導線が一気通貫し、タイムリーに同期されているからこそ、新着商品を心待ちにしているファンの購買機会を逃さず、高い消化率を実現できているのだ。言葉にすると当たり前のことかもしれないが、それを徹底しているところにアルページュの強みがあるのだろう。