セールしない、余剰在庫もないアパレル「アルページュ」 会社もお客も「幸福な」理由

2023/01/11 05:55
堀尾大悟
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10年前に「セールをしない」ことを決断

 セール品が飛ぶように売れ、顧客どうしで取り合いになるような熱狂の陰で、野口氏は複雑な思いを抱くようになったという。

 「商品をたくさん作って売上を伸ばすことがベストなのか?」

 売上を目標にすると、前年の売上をベースに売上目標を立て、さらに商品を製造する。売れなかったものは当然在庫になり、最終的にセールやアウトレットで処分する。そうすれば目先の売上は確保できるかもしれないが、「違和感」が残った。

 「せっかく正規価格で買った商品がセールで値引きされているのを見たら、お客さまも残念な気持ちになるはず。それはお客さまにとっても、当社にとってもいいことではないのでは?」

 2012年、野口氏は一つの大きな決断をする。「原則としてセールは行わない」――例外的にECサイトで1日のみ(場合によっては23日間)のフラッシュセールは実施するが、リアル店舗ではセールを実施しない方針に踏み切ったのだ。

 「『本当にお客さまにとって何がいいのか』を突き詰めた結果、必要以上に商品を作りすぎないことだと気づいた。必要なだけ生産し、セールには頼らずに売り切っていく。そのほうが経営的にも無理がないと考えた」

 その決断から10年が経過し、今日でもアルページュの業績は好調だ。2020年のEC売上高は、コロナ禍にあって対前年比1.8倍に増加。商品の消化率は公表していないものの、「現実的な数字として70%をめざしている」と、アパレル業界では高い目標値を掲げている。

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