収益構造から考えるネットスーパー黒字化へのヒント 1顧客当たり営業利益率に注目しよう

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店舗部門との「一体感」をどう醸成するか

 それと、ある程度大きな企業になると、ネット宅配と店舗運営の役員が異なるケースが多く見られます。この場合、ビジネスの一体感が醸成されないという問題が出てきます。ネット宅配は当然、お店の中にある商品を持ってきて配送します。ネット宅配部門と店舗部門のチーフの間に一体感がないとピッキングの段階から軋轢が出てきてしまいます。

 そうした事態を防ぐために、通常は店長がマネジメントするわけですが、ネット宅配と店舗の役員同士の関係が上手くいってない企業では、この部分でおかしな問題が起こっています。たとえばネット宅配のスタッフが商品を店へ取りに行くと、「せっかくつくった商品を取るな」「あっちに行け」と言われるなど、冗談に思えるようなことが某大手スーパーの現場では日常茶飯事です。これでは絶対に上手くいきません。このような問題は大手スーパーの現場で頻繁に発生しています。

 ネット宅配はあくまで店の商品を売る一部門ですから、店舗との一体感が成功のためには欠かせません。そのため本来は、店舗運営担当役員がネット宅配の担当も兼ねるのがベストですが、通常はそうはなりません。

 もう一つ具体例を言うと、ネット宅配の商品は本来、店舗部門が収集するのがベストです。その方が店舗全体の人時効率から言うと圧倒的に効率がよいのです。ところが大体のネットスーパーはそうなっていません。どうなっているかと言うと、ネット宅配のピッキングさん(箱詰めスタッフ)が売場に行って商品を集めているのです。これも一体感の無さの現れです。つまり有機的に機能していない。スーパーの粗利益率は元々低く、ちょっとした人時効率の良し悪しが最終利益にも響いてきます。店舗部門とネット宅配部門との一体感が成功のカギと言っても過言ではありません。

 次回は主にシステム面での問題点と成功のカギについてお話ししたいと思います。

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