倉林武也のインサイト入門③買い物客(ショッパー)の気持ちをとらえるポカリスエットのインサイトとは
ショッパーインサイトはこの不一致を同じ方向に向かわせる効果も持つ
小売業、メーカー企業それぞれの視点が異なるままでは、共に満足の行く展開や目標に掲げたゴールにはつながらない。この時の小売業とメーカー企業の異なる視線を同じ方向に向けることに「ショッパーインサイトの活用」は効果を生む。インサイトを見つけて、それを上手に展開へとつなげることは、相互にとって新しい市場や需要の開拓につながることになり、両者の目標が一致をする。
そうしたインサイトをとらえるための手がかりとしてショッパー(買い物客)と商品やサービスを展開する「場」に注目をしたい。小売業とメーカー企業がインサイトに取り組み効果を生む時のコツがここにある。買い物の「場」を理解しながら、ショッパーの様子を掘り下げて洞察し、そこにある「願望」や「不満」、「矛盾」を掘り下げていくと、ただ漠然とショッパーのインサイトを掘り下げようとするよりも、遥かに精度の高い展開や結果につながる。
ポカリスエットは若者や夏のイメージを持つ商品。でも量販店における主なショッパーは主婦層
例えば、多くの人が購入や飲用の経験を持つポカリスエット(大塚製薬)。この商品の持つイメージを挙げてみると、スポーツ中に汗をかくシーンや、夏の暑い日差しや学生や若者の姿を思い浮かべる方が多いだろう。
ところが、この商品が最も多く購入される食品スーパーなど量販店の客層の中心は、主婦層やシニア層になる。若者のイメージから販売促進のテーマをつくっても、量販店のショッパーの中心層である主婦層には今ひとつピンとこない。この時に、ショッパーである主婦層や女性の気持ち(願望や不満)をとらえると、「夏の水分補給は大切だが、秋から冬にかけては肌の乾燥や子どもが風邪をひいた時の水分補給が気になる」といった気持ちの中の声が見つかる。そうすると、この商品を訴求できる季節も、夏場に限らずに年間を通じた商談が期待できる。
一方、若者層のインサイトのとらえ方では、ポカリスエットの未来を担う(今後の量販店における購買層の予備軍としての)意味からも重要になり、マスメディアやSNSを使用して、彼らの自撮りやダンス選手権などへの参加・出演を含めた「共感や話題作り」が重要な施策になる。
この様に「インサイト」の追求は、ショッパーのとらえ方とその商品やサービスが展開される「場」の考察を、話し合いの中で行ったり来たりしながら進めることになる。ポカリスエットは、この画像にある様にすでに5年以上展開されている。「うんうん、それわかる」と頷けるインサイトは、年数を経ても通用する企画や展開を生む。
次回は、この「場」について量販店やそれ以外のチャネルの捉え方を中心に、その活かし方・注意する点についてを事例を含めながら紹介する。
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