評伝 渥美 俊一(ペガサスクラブ主宰日本リテイリングセンター チーフ・コンサルタント)
「ビッグストアになっただけでは意味がない」
日本リテイリングセンター(JRC)主催のペガサスクラブ政策セミナーで、「1兆円のあと何をするのか」と題された記念講演に立ったダイエーの中内㓛だが、周囲を蹴散らかさんばかりのその勇ましい演題は、おそらく渥美俊一によって据えられたものであったろう。ほかならぬ「渥美先生」の命とあっては、いかに居心地のよくない講演名であったとしても、断りようがなかったに違いない。
年商が日本一となり、ついには1兆円を超えるに至っても、歩をゆるめることなく流通革命により邁進(まいしん)しなければならないのであり、十字架に磔(はりつけ)にされたイエス・キリストのように殉(じゅん)ずる覚悟であると、ブラックジョークをきかせるように語ってみせた。あらかじめ講演原稿の梗概くらいは用意していたであろうが、ペガサスクラブ会員企業の経営トップが居並ぶ場では、悲愴な決意を表明したように響き、能天気に笑って受け流すのははばかられる緊張感はあったのではないか。
この講演当日に際して、中内㓛は次のようにも述べている
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