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2030年に売上高3兆円へ!良品計画・堂前宣夫新社長が策定した新中計の戦略とは

「無印良品」を運営する良品計画(東京都/松﨑曉社長)は2021721日、248月期を最終年度とする新たな中期経営計画を発表した。9月から新社長に就任する堂前宣夫氏のもと、「第二創業」に突入した同社は30年を見据え、個店経営を軸とする地域密着型の事業モデル構築などに注力する。

年純増100店舗の出店をめざす

 228月期~248月期の新たな中期経営計画は、良品計画の「2030年に実現したいこと」を見据えて、9月から社長に就任予定の堂前氏を中心に策定された。同社は30年までに「日常生活の基本を担う」「地域への土着化」を実現するため、「個店経営、コオウンド経営の実践」「感じよいオンラインの提供」「ESG経営のトップランナー」の3点に注力する。

 このような長期的な視点のなかで、良品計画は今回の新中計で日本と中国大陸にリソースを集中。日常生活の基本を支える商品群とその調達・生産体制の構築、個店経営を軸とした地域密着型の事業モデルの構築、自発的に活動する組織風土づくり、個店経営と土着化を軸とした事業を支える事業基盤の構築に取り組む。

 これらを実現するための具体的な取り組みをいくつか取り上げたい。1つは新規出店の加速だ。24年に年純増で日本100店舗、中国大陸50店舗のベースにのせることを目標とする。生活に必要な基本的な商品をよりいっそう強化するため、標準店の面積はこれまでの300坪から600800坪に拡大。地元で支持の高い年商20億円超の食品スーパー(SM)に隣接するかたちで出店する。

良品計画はSM隣接店舗の出店を強化する(写真はクイーンズ伊勢丹と協業する「無印良品 港南台バーズ」)

 これまでも良品計画は「アルビス」「ツルヤ」「ヨークベニマル」「クイーンズ伊勢丹」などSMに隣接する店舗への出店を行っており、SM隣接店舗の業績は概ね好調に推移しているという。また、SM側も無印良品が隣にあることで客数が伸びており、「30代の若い人も来店するようになった」などのシナジーも出ているとのことだ。「SMと競合するわけではなく、お互いを補完する関係を構築したい」(堂前氏)

 標準店のほか、より規模が大きい20003000坪の「生活全部店」も年間5店舗の出店をめざす。このフォーマットは、物販だけでなく物流や各種サービスの拠点にも活用する予定だ。さらに、鉄道が生活の中心である都市圏では、駅ビルや駅チカで100坪規模の出店を図るなど、立地に応じてフォーマットを使い分ける。「地域事業部」を新たに立ち上げ、人口60万人ほどのエリアを基準に、「生活全部店」1店舗、標準店6店舗、そのほか駅前やコンビニエンスストア拠点、宅配などで合計90億円ほどの売上を見込む。

 

店舗での医薬品販売も開始

 より生活者に密着するための商品も充実させる。具体的には、タオルやシーツ、掃除用品、生活用品、キッチン消耗品などの品揃えを強化。「これまで無印良品は収納用品などが強かったが、毎月買うような商品ではない。より日常的に必要なものを増やしていきたい」(堂前氏)

9月から良品計画の新社長に就任する堂前宣夫氏

 また、以前から実施している価格改定を継続。誰でも手に取りやすい価格を実現するため、戦略的に粗利率を低減させる。それを補うため、「開発生産部」の新設により商品原価低減に取り組むほか、店舗の経費効率向上も実施。全商品へのRFIDタグ取り付けなど作業を効率化するほか、地方の生活圏への出店で投資額を抑える。また、歩合家賃から固定家賃への転換を進め、売上向上とともに家賃比率が下がる構造に移行する。

 そのほか、物販以外でも地域のコミュニティセンターとなるようなさまざまなサービスを実施する。山林課題の解決から暮らし方までを提案する空間設計・リノベーションを本業とする空間設計事務所を立ち上げるほか、一部の店舗で提供していたクリーニング、修理、清掃、引っ越しなどのサービスを事業化する。また、健康事業にも参入し、店舗での医薬品の販売に加え、ヘルスケアや健康関連のサービスも開始する考えだ。すでに「無印良品 直江津」(新潟県直江津市)では病気の予防・健康維持から薬までを一気通貫で提供する「まちの保健室」がオープンしている。

 

20代でも執行役員になれるキャリアパスも

 このような多くの取り組みを下支えする人材の育成も急務だ。とくに年間100店舗の出店をするとなると、そのぶんだけ店長も必要となる。良品計画は通年で採用活動を行い、新卒・第二新卒を含め、毎年150人の店長候補を採用する考えだ。入社2年後に店長となることを標準とし、優秀な人材は20代でも執行役員になれるキャリアパスも用意する。

 新中計最終年度となる248月期で、良品計画は売上高7000億円(日本4500億円、海外2500億円)、営業利益750億円、営業利益率11%ROAROEともに15%以上という数値目標を掲げる。これを実現するため、現存店成長102%/年、店舗数1300店舗、平均坪数300坪、EC化率15%をめざす考えだ。

 さらに308月期末までには、店舗数2500店舗、平均坪数550坪、EC比率30%を実現し、売上高3兆円、営業利益4500億円、営業利益率15%ROAROEともに15%以上をめざす。

 堂前氏は発表会の場で「当社には『社会をどうよくするか』という考えがDNAのなかにあり、ブランド力も非常に強い。一方でオペレーション力ではまだまだ改善の余地があると感じる。今後の組織力の向上には自分も貢献できるのではないか」と話していた。新中計の目標を達成するためには、オペレーションの向上も大きなカギになりそうだ。