ワークマンのアンバサダーマーケティング、報酬無償だから成果が出る理由 きっかけは溶接ヤッケ10万着の大ヒット
アンバサダーにも情報発信力アップの利点
同社の企業アンバサダーにはもう一つ、大きな特徴がある。それは“無償”という点。
例えば、同社が、商品開発の打合せにかかった交通費や食費などの実費を負担したり、新商品を無料で進呈したりすることはあるが、アンバサダーとしての金銭的報酬は与えていないというのだ。アンバサダーとしての契約料や、商品の販売実績に応じたインセンティブを支払ったりする企業も多いという中で、異色とも言える。
そうした仕組みにしている理由として、「金銭のやり取りが介在すると、アンバサダーさんも第三者の立場ではなくなって、発信する情報にも宣伝の色が出てしまうんです。受け手には、それが敏感に伝わります。ですから、アンバサダーさんには、金銭のしがらみがなく、自由な意見や感想を発信してもらったほうがいいんです」と、丸田氏は説明する。
同社にとっては、広告宣伝コストを抑えられるというメリットもある。丸田氏は、金銭的報酬がないだけに、アンバサダーに商品サンプルを送ったり、商品内容を紹介したりはするが、商品をどのように取り扱うかは、アンバサダーの自主性に委ねているという。企業広報部やPR会社とメディアの関係に似ているとも言えよう。
とはいえ、金銭的報酬が得られないのであれば、企業アンバサダーに就任する人も、少なくなってしまうのではないか。
「確かに、他社に比べて、そうした側面も否めません。しかし、例えば、ブロガーさんやユーチューバーさんにとって、当社の商品情報をいち早くゲットできたり、愛着のある企業と関われるということは、大きなアドバンテージになります。それに、約13万人いる当社の公式インスタグラムのフォロワーなどにつながることもできるので、情報発信にも有利に働くはずです。実際に、メディアでの露出度もアップし、活躍のフィールドが増えたアンバサダーさんも多いようです」(同)。
また、同社のアンバサダーの中には、「減っているバイクのライダーを増やしたい」「狩猟に対する社会の理解を広めたい」といった啓発活動に力を注いでいる人も多く、そうした活動にも寄与すると考えて、アンバサダーを引き受けるケースも多いそうだ。
同社では今後、ジュニア向け商品の開発を進めるなど、一般ユーザーの取り込みに向けたカテゴリーの拡大にも余念がない。そうした中、丸田氏は「今後、アンバサダーを約50人まで増やしたいですね」と意気込んでいる。