ワークマンのアンバサダーマーケティング、報酬無償だから成果が出る理由 きっかけは溶接ヤッケ10万着の大ヒット
情報の質を重視してアンバサダーを選定
同社には現在、約40人のアンバサダーがいる。猟師やファッションアナリスト、職人出身の経営コンサルタントなど肩書はさまざまだ。モータージャーナリストや山岳ライター、旅行のユーチューバーといったメディア関係者も少なくない。だが、本職の“プロ”ではなく、専門領域には通じているものの、プロとは距離を置いた“セミプロの愛好家”が目立つのも、特徴と言えるだろう。
アンバサダーの情報発信でヒットした商品の例としては、前述のヤッケのほかに、釣り人にも人気を集めたジャンパーもある。
「もともと農作業用の、防寒着も兼ねたレインコートだったんですが、『風を通さないので、釣りをしているときも寒くない』と、好評を博したんですね。年間数万着の売上が数十万枚に伸びました」(同)。
アンバサダーの発掘は、丸田氏が中心となって行っている。「紹介されることもありますが、自社のエゴサーチを足がかりに、自分たちで見つけ、お声がけをしています。選ぶ第一条件としては、ワークマンに対する愛着の強さが挙げられますね。専門知識やコンプライアンスをチェックする場合もあります。ただし、フォロワー数といった量的な条件よりは、投稿内容の質を重視しますね」(同)。
商品の紹介、イベントへの参加や発信などがアンバサダーの主な役割だが、それだけではない。商品開発でも、活躍しているという。
「商品開発のコンセプトが決まると、商品化の前に、アンバサダーにユーザー代表として意見をうかがうんです。電話会議の場合は、商品サンプルを先に送って、30~60分意見交換をするケースが多いですね」(同)。
例えば、前述のサリーさんからの提案で、ヤッケの新作を開発したこともある。プロ向けの既存のヤッケは、溶接作業の支障となる前ファスナーは付いていないのだが、「女性は、かぶりタイプを着用すると髪の毛がくずれる点が気になるという意見を反映し、ファスナー付きのタイプも出しました」と丸田氏。今夏には、ペットトリマーの協力による「ペットの毛がつきにくいウェア」や、旅ユーチューバーが機能面をアドバイスしたPC収納もできる一人旅用リュックなどを発売。2021年には、約100アイテムの商品開発で、アンバサダーに参加してもらう計画だという。