価格競争から脱却し「健康経営」で勝ち抜く! 静鉄ストア代表取締役社長 竹田 昭男
竹田 社内の雰囲気が明るくなり、社員の意欲が向上しているように感じます。たとえば当社ではCS(顧客満足)活動を各店舗で推進していますが、やはり従業員自身が健康でなければ「笑顔で接客する」ことすらできません。従業員が健康を意識するようになったことで、接客レベルは格段に向上したと思います。外部のチェッカーコンテストで上位入賞する従業員も出てくるようになりました。
──健康宣言に関連する取り組みによって、従業員に変化は表れましたか。
お客さまからのお褒めの言葉も以前よりだいぶ多くなってきました。もちろんお叱りやご意見をいただくこともまだありますが、それもお客さまからの期待値が高まっている証拠だととらえています。
今後は、こうした成果をいかに客数アップにつなげていくかを考えるフェーズに入っていくでしょう。
──一方で、SM業界では人手不足の問題が深刻化しており、そもそも働き手を確保すること自体が難しくなっています。静鉄ストアではどのような対策を講じていますか。
竹田 当社も例外ではなく、人手の確保が難しい状況が続いています。そこで働きやすい職場環境をつくるために、営業時間の短縮に踏み切りました。まず16年に閉店時刻を基本的に22時までとし、昨年4月からは開店時刻を9時から9時30分に変更しました。
──営業時間を短縮したことで売上に影響はないのですか。
竹田 営業時間は短くなりましたが、ポイントカード会員の購買データを分析したところ、売上への影響はほとんどありませんでした。営業時間が変わっても、ほとんどのお客さまには変わらずにご来店いただけていることがわかったのです。人手が足りない状況で無理に営業して、サービスの質が低下してしまっては元も子もありません。サービスの品質を維持するためにはやむを得ないことでした。
人手不足の問題は今後も続いていくと予測されます。将来的には、各店舗で新たに休業日を設定することも考える必要が出てくるかもしれません。
規模ではなく質を追求、持続可能な企業をつくる
──今後の出店戦略について教えてください。
竹田 出店スピードを加速していくという考えは今のところありません。われわれの商勢圏においてSMはもはや飽和状態にあります。県内のどこであっても、クルマで5分も走ればSMが見つかると言っても過言ではないほどです。
そんな状況ですので、今後出店するとしても、たとえば地場のSMの閉店跡に居抜きで出店するようなかたちが中心になっていくでしょう。もちろん好条件の立地があれば新規出店も検討しますが、投資回収に相当の時間がかかってしまいます。
──M&A(合併・買収)の可能性はありますか。
竹田 親会社である静岡鉄道が判断することですが、その可能性がないとは言えません。これまでも、地場の小規模なSMを買収した経緯があります。ただ現状は、事業規模を拡大するというより、既存の店の売場や商品をさらに磨き上げることを重視する考えです。むやみに会社を大きくするというよりは、地域の生活インフラを支える鉄道会社のグループ企業として、「持続可能な企業」をつくることをめざします。
──最後に、今後どのような店づくりをめざしていきますか。
竹田 たとえば4人くらいの家族であれば、毎月1回は何らかのイベントがあるはずです。そのようなハレの日に、デパ地下でもなくレストランでもなく、静鉄ストアに来て買物をしていただけるというのが理想です。ふだんは近所のSMを使っている方でも、何かいいものが欲しいときは「静鉄ストアに行けば何かがある」と期待を持って来ていただけるような店づくりを進めていきます。