人口減少時代、スーパーの定番手法は間尺に合わなくなる!いまやるべき3つの具体的投資とは

森本 守人 (サテライトスコープ代表)、阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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“間尺”に合わなくなるSMの定番手法

 食品スーパー(SM)業態が日本に誕生してから約70年が経とうとしている。生鮮食品のほか日配品、加工食品など、食卓に並ぶ食材を提供する重要な役割を果たしているのがSMである。われわれの生活に浸透し、不可欠なインフラとして機能している。

 振り返れば、SMについてはこれまで数々の運営手法、ノウハウが開発されてきたが、多くは人口が増加していた時代に編み出されてきたものだ。つまり需要や市場が拡大することを前提にしているといってもいい。

 たとえばマーケティング分野、もしくは価格政策の「ロスリーダー戦略」。特定の商品において採算を度外視した低価格を設定して集客、大量販売する方法である。効果を狙って価格弾力性の大きいアイテムを選び、目当てに来店したお客がほかの粗利益率の高い商品を買うことで店全体の利益に結びつける。

 人口が年々、増えている時期には、市場全体の需要が拡大しているため有効で、繰り返し行うことにより、着実に大きく利益を上げることができた。近年はEDLP(エブリデー・ロープライス)に移行するケースが少しずつ増えてはいるものの、かつての成功体験から、今もハイ&ロー価格政策を主力にしている企業は多い。

 精肉、鮮魚などの生鮮食品や、弁当、揚げ物といった総菜の「インストア加工」も同様だ。売上高が伸長している時期には多くの人手を投入することもできた。一方では鮮度を最優先するため、最終消費地に近い場所にある店内で商品のカットや調理を行ってきたという面もある。

 しかし冷凍・冷蔵、加工技術、物流分野ではコールドチェーンなどの進化はめざましい。消費者の家にある冷蔵庫も変化しており、同じサイズであっても大容量化するほか、鮮度を保つためのさまざまな新機能が次々と搭載されるようになっている。

 SMでは、家庭での優れた保存環境を想定した商品開発、提案があってもよさそうに思うが、今も昔ながらのインストア加工にこだわる企業が多いのが現状である。SMの定番ともいえる、これらの手法は今も現役だ。しかし今後、人口減少が進み、さらに加速することになれば、いずれもビジネスの間尺に合わなくなり、やがて通用しなくなることは十分考えられる。

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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

記事執筆者

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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