ベイクルーズ野田晋作副社長が語る!EC売上500億円突破、勝ち残るアパレル企業の深化形とは
圧倒的なクロスユース率の高さをどうやって実現したのか
アパレル業界のなかで突出した強大なEC専門組織が核となり、同社はネット専業企業に負けないナレッジとノウハウを蓄積。表には見えない緻密なデータ分析で、顧客一人ひとりに価値あるショッピング体験を提供する「ユニファイドコマース」(統合された買い物体験を提供する商取引手法)を追求。大きな成果につなげている。その顕著な事例が、店舗とECのクロスユース率の高さだ。これは、1人のお客が店舗とECの両方で購入するケースを言う。2020年8月期のクロスユース率は52%で、クロスユースユーザーの平均年間購入金額は店舗のみのユーザー比で3.7倍にもおよぶ。
野田氏 蓄積したナレッジで、売上予測や販促の精度が高まっています。例としてマーケティングオートメーション(MA)のシナリオをいくつかご紹介します。まず一番効くのは、お気に入り登録をしている商品の残り在庫がわずかだとお知らせすること。また、直近1週間で3回同じ商品を見て購入しなかったお客さまに対しての在庫通知やお気に入り登録している商品の値下げ情報など、どれも数億円の売上効果が見込めます。そうしたシナリオを現在、100本くらい同時に走らせていて、それぞれの効果検証をしています。やはり、お客さまが気になっている商品や欲しいと思っている商品に対する、在庫関連の通知は効果が高いですね。また去年の秋冬から再入荷リクエストをしているお客さまに対して、画像認識AIで分析を行い、類似商品をレコメンドするということも始めていますが、これも効果が出ています。
ベイクルーズでは、テクノロジーを最大限に活用することで、売上予測と実際の売上の乖離を限りなく減らすことに成功している。今後はECでの販売予測を元に生産数量を決めることで、在庫、プロパー消化率の最適化も実現していきたい考えだ。一方で、リアル店舗を持つ小売業の強みをさらに活かすことに余念がない。
野田氏 ネット専業企業とわれわれのいちばんの違いは、店舗で販売員がフェーストゥーフェースでお客さまと対話しながら販売するという体験価値にあります。その意味では、リアル店舗と同等の体験価値をサイト内でウエブを介しても提供すべきと考えています。そうした意識を社員全員で共有できていることが、「クロスユース率」の高さに寄与していると思います。
それを裏付けるといえるかはわかりませんが、コロナ禍でロイヤルカスタマーの購買額が2倍ぐらいになりました。今後もこうしたデジタル部門の接客は、チャットやオンライン、ライブコマースの活用などで強化していきます。並行して、オンライン経由の売上の可視化をすることで、従業員のモチベーションに連動する制度面も整備していきます。