ドラッグストアと食品スーパーをはじめとしたほかの食品小売の、冷凍食品をめぐる争奪戦が激化している。ドラッグストアにおいて、冷凍食品はもはや必須のカテゴリーと言えるほどに扱いが浸透した。こうしたドラッグストアによる冷凍食品強化に対抗するかのように、食品スーパー大手が冷凍食品の売場を拡大したり、コンビニが商品開発を加速させたりといった動きが見られている。
「オーケー」が冷凍食品を強化中
ディスカウントスーパー大手のオーケー(神奈川県)が2020年12月に開業した「所沢店」(埼玉県所沢市)。同社の店舗レイアウトは標準化されており、どの店舗も同じような売場配置となっているが、所沢店では標準レイアウトを踏襲しつつも、ほかの店舗ではあまり見られない、新たな売場づくりにチャレンジしている。
売場を見ていくと、野菜など生鮮食品売場のすぐ横に、冷凍食品を並べていることがひと目でわかる。一般的な食品スーパーでは、冷凍食品はリーチインケースに並べていることが多い。しかし所沢店でが、青果や精肉、鮮魚の売場の近くに、冷凍の多段オープンケースを設置し、冷凍食品が販売しているのである。
具体的な商品としては、冷凍の鶏肉や豚肉のほか、冷凍刺身、「さんまの塩焼き」など調理済みの商品も見られた。青果売場の一角では、「凍眠市場」と銘打ったコーナーを展開、冷凍果物などを販売している。さらにこれらとは別に、通常の冷凍食品売場も設けており、冷凍リーチインケース数十台をズラリと並べ、圧巻の品揃えで売場を展開していた。
冷凍食品を強化する理由
なぜ、オーケーはこれほどまでに冷凍食品の販売に力を入れているのだろうか。冷凍食品の販売に詳しいある経営コンサルタントは、「ドラッグストアへの対抗ではないか」と指摘する。
ドラッグストアにおいて、冷凍食品の取り扱いもはや必須と言ってほどに浸透している。生鮮食品や日配品と比べて保存可能な期間が長い冷凍食品は、発注の手間が少なく、見切りや廃棄のロスのリスクもそれほど高くない。コールドチェーンの物流費などの問題はあるものの、「売る側」からすれば、比較的扱いやすいカテゴリーとも言える。
こうした“扱いやすさ”もあってか、近年はコンビニチェーンも冷凍リーチインケースを増やしたり、平台のケースを新たに設置するなど、こぞって冷凍食品を強化している。商品でも、セブン-イレブン・ジャパン(東京都)が冷凍総菜シリーズを積極展開するほか、ファミリーマート、ローソン(いずれも東京都)も冷凍食品の拡充を推進中だ。
三つ巴の“冷たい戦争”
食品スーパーやコンビニ、そしてドラッグストアと、冷凍食品をめぐる需要の争奪戦はまさに三つ巴状態となっている。こうした背景もあって、当然、冷凍食品の生産量も増加傾向にある。
日本冷凍食品協会の調べによると、1989年の冷凍の調理食品の生産量は約71万3000トン。これが2019年には142万6000トンと、約30年で倍以上に増えている。人口が減少するなかで、これほど着実に市場を拡大している食品のカテゴリーも少ないだろう。
総務省が発表している「家計調査」によれば、2020年12月の「冷凍調理食品」の支出は対前年同月で30%以上の伸びを示している。
商品の積極開発、売場の拡大に、巣ごもり需要の追い風もあって、今後も冷凍食品市場は拡大が見込まれる。冷凍食品の需要をめぐる“冷たい戦争”に勝利するのは、食品スーパーか、コンビニか、ドラッグストアか――。