働きがいのある職場をつくり沿線地域との「共存共栄」をめざす=東急ストア 須田 清 社長
経営理念を共有し生き生きと働ける環境をつくる
──新規出店や事業拡大に当たり、人材はどのように確保していくのでしょうか。
須田 世の中は慢性的な人手不足に陥っており、単に時給を上げるだけでは人材は集まらなくなっています。そのため当社では、すでにいる従業員に長く働き続けてもらえるような制度を設けています。
たとえば、定年の60歳を過ぎても知識やスキルがある人には引き続き店長や部長などの役職に就いてもらう「エキスパート社員制度」や、65歳を過ぎても後進を育成する、いわゆる教育係の役割を担ってもらう「シニアエキスパート社員制度」を導入しています。すでに制度を利用して65歳を過ぎても活躍している従業員もおり、彼らには後に続く人たちの希望の星になって欲しいと考えています。
また、パート社員やアルバイトの退職率を下げる試みとして、15年9月から「ウェルカムプログラム」を開始しました。これは、面接から採用、初出社時、入社3カ月後まで、いつ、誰が、どのように接するのかをマニュアル化したものです。採用後も面談の機会を設けることで、パート社員やアルバイトの不安を解消するとともに、仕事の目標を共有してやりがいを持って働いてもらえるようにしています。
さらにパート社員やアルバイトを効率的に採用するため、経営統括室人材戦略内に「採用強化チーム」を新たに結成しました。同チームが各店舗に入り込み、専門家の意見を取り入れながら、その地域で効果的な募集宣伝エリアや、最適な時給を設定しています。募集媒体もチラシやハローワークに限らず、さまざまな方法でアプローチします。
並行して新入社員の採用も強化しています。来年春に入社する正社員については、約70人を採用予定です。今後も毎年50~70人を採用したいと考えています。これまで、凍結していた高卒の正社員も採用を再開する方針です。
──創業60周年を迎えるに当たり、経営理念の「共存共栄」を大きく打ち出しています。
須田 昨年までは、会社の経営方針を示す「社是」というかたちで「共存共栄」を掲げていました。しかし「共存共栄」という言葉は、人によってさまざまな捉え方ができてしまいます。そこで、創業60周年にあたり、東急ストアがどのような企業でありたいか、会社のめざす方向性を従業員にきちんと理解してもらおうと考えました。
社内で「共存共栄」とはどのようなことなのかあらためて話し合い、全従業員がわかりやすく解釈できるよう、5つの行動指針(左)を立てました。
また、ビデオを制作して全従業員に見てもらいました。内容はストーリー仕立てになっており、母親の誕生日に内緒でカレーライスをつくって驚かせようと、2人の子供が東急ストアに来店します。カレーをつくるためのアドバイスを従業員に聞きながら買物をして、最後はテーブルを囲む家族団欒の様子が描かれています。
SMは、地域のお客さまの日々の幸せのお手伝いができる仕事です。ビデオに登場する家族のように「東急ストアがあってよかった」と感じていただきたいと従業員が共感し、日々の仕事に取り組んでもらえたら嬉しいです。「共存共栄」という理念を大切に、地域に愛され、お客さまと共に成長できる企業をめざす、これは私たちが働くうえで最も大切にする想いです。
この経営理念を具現化するためには、従業員が生き生きと働くことができる職場づくりが重要であり、従業員に対する処遇の改善や採用活動の強化にいちばんに取り組みます。16年度の政策には、①働きがいのある職場づくり、②チェーンストア力の強化、③個店経営の実践、④成長に向けた挑戦を、大きな柱として挙げています。
東急グループの一員である当社は、グループのめざす東急沿線の価値向上に貢献することも重要です。東急ストアは東急沿線の地域に貢献する社会的使命を持っている企業であり、それがわれわれの誇りでもあります。今後も従業員一丸となって、地域に愛される店舗を1店1店丁寧につくっていきます。