「3つの施策に取り組み、長期目標を達成したい」=阪食 千野 和利 会長
全品、自動発注システムを導入
──2つめの「チェーンストアオペレーションの確立」とはどのような内容ですか。
千野 15年度以降も、積極的に出店することで、当社の店舗網は着実に拡大していきます。現在、76店を展開していますが、このままのペースでいけば、あと数年内に100店を突破します。その際、円滑な店舗オペレーションを行うために大きな威力を発揮するのが、建設を進めてきた「高槻物流センター」(大阪府高槻市)です。
敷地面積8000坪、鉄骨造り地上4階建てで、今年1月にようやく竣工の運びとなりました。1階あたり4000坪、延べ床面積は1万6000坪の規模で、当社が長期目標に掲げている売上高2000億円規模の物流に対応できるキャパシティーと能力を備えています。
先ほどお話ししたブランディングは、主に外面的な分野といえます。それに対し、物流センターは、チェーンストアの根幹を支えるインフラとして、非常に重要な役割を持っています。スムーズな店舗運営を実現させることで、店舗における従業員の負担を可能な限り軽減できるような仕組みをめざしています。
──施設はどのような機能を備えているのでしょうか?
千野 「常温」、「チルド」、「冷凍」という3温度帯の商品を一元的に扱うことができるため、過剰な在庫を削減するなど、効率的な物流を実現できます。またセンターは全品の自動発注システムに対応しています。当社のような事業規模での事例はそれほど多くないと自負しています。
物流センターの稼働により、店舗における作業スケジュールを再構築し、業務改革を進めます。それにより削減した人時を、対面コーナーなど店舗の競争力につながるような分野に配置し、生産性の向上にもつなげていきたいと考えています。
香港のシティースーパーと業務提携
──3つめの施策「利益構造の多角化」について教えてください。
千野 競争が激化しているSM業界では、今後は商品を仕入れて販売するという、従来型のスタイルだけで生き残るのは難しくなります。そこで当社が近年、力を入れてきたのが「SPA(製造小売業)化による高利益体質への転換」です。
当社は傘下に製造3社を抱えており、これらを最大限に活用していきます。3社とは弁当、寿司、総菜の製造を手がける阪急デリカ(大阪府/須永隆社長)、パンの阪急ベーカリー(大阪府/河原逸雄社長)、のりや昆布など乾物を製造する阪急フーズ(大阪府/金子英治社長)で、各社は新たなカテゴリーの商品にもチャレンジしています。
──自社グループで製造した商品を阪食のSMで販売するのですね。
千野 そうです。加えて、当社と緩やかに連携する、エブリイ(広島県/岡〓雅廣(おかざき・まさひろ)社長)、サンシャインチェーン本部(高知県/川崎博道社長)、ハローデイ(福岡県/加治敬通社長)といった企業と共同で商品開発をし、販売するという取り組みをここ数年強化しています。また、14年6月、エイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/鈴木篤社長)と経営統合したイズミヤ(大阪府/四條晴也社長)とも同調していく方針です。
さらに当社は14年11月、香港で高質SMなどを展開するシティスーパー社と業務提携契約を締結しました。商品調達、商品開発における相互協力のほか、販売政策や販売方法に関する情報の交換なども行っていく考えです。
緩やかな連携、また業務提携などによる、これらの企業の売上高を合算すると6000億円超の連合となります。そのバイイングパワーを生かせば、従来のビジネスの枠を超えた動きも可能になります。たとえば、青果分野で、北海道の広大な農地を確保し、全メンバーで青果物を販売することもできますし、日配やグロサリーでは、メーカーや工場を買い取り、単品量販するといったことも考えられます。これを通じ、「利益構造の多角化」を進めていく方針です。
──今後、阪食という企業は大きく変化しそうですね。
千野 これまで話してきたように、当社は15年度からの3年間、「《阪食》のブランディング」「チェーンストアオペレーションの確立」「利益構造の多角化」に取り組み、他社との差別化を図っていきます。そして2020年度には、売上高2000億円、営業利益80億円という大きな目標を達成したいと考えています。