「3つの施策に取り組み、長期目標を達成したい」=阪食 千野 和利 会長

聞き手:千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
構成:森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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「みんなで創るあなたの市場」

──長期目標を見据え、今期以降はどういった施策を実施しますか。

千野 大きく分け、3つに取り組んでいきます。最初は「《阪食》のブランディング」、次に「チェーンストアオペレーションの確立」、そして最後に「利益構造の多角化」です。これらを15年度を初年度とする3年間でやり遂げる考えです。

阪食

──《阪食》のブランド確立に取り組む目的は何ですか。

千野 今後、当社は年間7~8店舗と出店ペースを加速する方針です。となれば必要になる経営資源はヒトです。新卒、中途採用社員、またパートタイマーといったスタッフを、ざっと見積もって1年間1000人、5年だと5000人を採用することになります。阪食について何も知らない方に対し、われわれは何をどう教えるべきかは非常に重要です。つまり阪急オアシスが何に価値を置くべきかをあらためて明確にする必要がでてきたのです。

 ブランド確立をめざすにあたり、「高質食品専門館」のキャッチコピーとして定めたのは「みんなで創る あなたの市場。 阪急オアシス」です。「みんな」はお客さまに加え、生産者、メーカー、当社の従業員すべてを指しています。また「あなたの市場」は、お客さま一人ひとりの売場という意味を込め、「売場」より活気が感じられる「市場」という言葉を使っています。

 そのうえで「食のプロフェッショナル」「安心安全な高品質食品」「ライブ感あふれる市場」といった観点のもと「高質食品専門館」に磨きをかけていきます。

──具体的には何に取り組みますか。

阪食

千野 15年11月、大阪府箕面市にオープンする予定の「箕面船場店」(仮称、売場面積1500平方メートル)に照準を合わせ、店づくりや品揃え、サービスなどの手法を再構築し、段階的に価値を向上させていきます。

 このうちお客さまに見えるものでは、(1)包装紙やエコバッグといった店頭消耗品、(2)従業員のユニフォーム、(3)ポイントカード、(4)チラシ、Web媒体、情報誌といった広告媒体、(5)会社の名刺や封筒などのビジネスツール──という分野で、デザインや機能などを順に見直し、刷新していきます。なかでも店頭消耗品やポイントカードといった、お客さまの手に渡るものについては優先順位を上げ取り組んでいきます。

同じ価値観を共有できるイベント

──「高質食品専門館」は視覚的なイメージが大きく変化するのですね。

千野 そうです。ただ目的は、単にロゴやデザインを変更することではありません。競争の激しい厳しい時代に新店を出し続けるなか、あくまで新たに当社で働く数千人の従業員が同じ価値観を持ち、同じベクトルに向かうためのブランディングなのです。

 次の数年、当社は新たな店舗スタイルや売場の開発、また生鮮食品を含めたオリジナリティある商品の開発、そして店内のコミュニケーションなどを通じ、新たな顧客の開発に力を入れてきています。今後は、さらにそのピッチを上げます。商品開発では最近、「びわ茶ぶり」「信州香原豚」「熊本れんこん」などのように生鮮食品が増えてきており、今後も新たな商品を続々と投入していく計画です。これら「高質食品専門館」が重視する、もしくは価値を置いている取り組みを可視化し、そしてお客さまにも伝えていきます。

──従業員の「高質食品専門館」への理解度を上げるイベントも開催するそうですね。

千野 年1回、「阪食フェスティバル」というイベントを開いており、今年は3月に大阪市内で行います。毎回、従業員約1300人に加え、われわれ役員、管理職をあわせ約1400人が参加する大きな催し物です。会社の状況や経営政策を発表する一方、「高質食品専門館」での取り組みや商品開発などについても説明します。

 また1年間の労をねぎらう意味で、パートタイマーを中心とする従業員の表彰も行います。選ばれた人は、アメリカや香港で開催する研修旅行へ参加できる特典があるため、とてもエキサイティングな内容、雰囲気となります。スタッフによる顧客満足の向上につながるような活動なども発表し、皆が同じ価値観を共有できる場として活用しています。

──売場や商品だけでなく、従業員を大切にするのが阪食の特徴です。

千野 やはりSMというビジネスは従業員の存在抜きには成立しませんからね。表彰のほかにも、「服部西店」(大阪府豊中市)の一角に設置している「阪食研修センター」では、座学や実地研修も行い、従業員のレベルアップを図っています。

 これらすべての取り組みにより《阪食》のブランドを完成させ、その集大成として今年10月の「箕面船場店」で結実させます。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

構成

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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