従来のやり方は通用しない「脱・スーパー」が生きる道=さえきセルバHD 佐伯 行彦 社長

聞き手:下田 健司
構成:太田 美和子
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 グループの運営については、情報システムや物流、商品調達など効果を出せる分野で統合を進めています。店舗開発についても、店舗の基本設計などから建築にかかわる部分まで、HDの店舗開発部門が担当しています。

 ただし、商品政策については、店舗開発と違って、各事業会社が主導的に実施しています。「フード(食)は風土」と言っていますが、地域によって食文化は異なりますし、事業会社の展開するそれぞれの地域で出店立地や店舗規模に違いがありますから、そのマーケットに合った商品政策を各事業会社が決める必要があります。3月に出店した「フーズマーケットさえき多摩平の森」「セルバ本店」「旬彩館 ホック安倍店」の3店舗は、事業会社それぞれの特色が出ていると思います。

 それでも、事業会社共通で重視しているのは、より本物の商品を売っていくということです。

 たとえば、みたらし団子は、2本で88円、98円といった価格のナショナルブランドメーカーの商品のほかに、1本120円の昔ながらの食材と製法でつくった商品を販売しています。後者の商品は値段が高いのですが、高齢のお客さまにとって昔なつかしい味ですから、よく売れます。低価格の商品と、ちょっと値段は高いけれども高質の商品の両方の商品が必要ですが、重要なことはバランスです。それは出店エリアによってどちらの割合が高くなるかは異なると思います。

 大手小売業が販売している商品を同じように売るだけでは、地域のお客さまが当社の店舗に来店してくださる意味はありません。当社が地域のために役立つには、当店に来店してくださるだけの理由をつくることが重要になります。

──来店してもらう理由とつくるというのは具体的にはどういうことですか。

佐伯 食品スーパー(SM)に生きる道はあると思っています。私が考えている生きる道は、「脱・スーパー」です。

 戦後の約70年をみると、驚くほど世の中は変化しました。これから先の変化はだれにも予測がつきません。そうした環境の中で、これまでと同じように、出店して、チラシを撒いて、カード会員を募るといったやり方で、果たしてお客さまに満足してもらえるでしょうか。より健康的で、よりおいしく、より楽しくという消費者のニーズを満たすことができるでしょうか。従来の延長線でSMを追求していたのでは、SMは必要なくなってしまうのではないかと危惧しています。

 すべてのお客さまが満足されることはありえないにしても、もっと消費者のニーズを満たす提案ができないかと考えています。大手小売業は金融、サービスなど小売以外のさまざまな事業を展開しています。われわれにはそのような力はありません。しかし、歩いて来られるような近隣のお客さまに対してできることはあるはずです。

 それには、「食」という、われわれの事業の中核分野で、異業種とのコラボレーションが必要になってくるでしょう。何か具体的な取り組み始めたわけではありませんが、そういう方向感は持っています。10年先、20年先を考えると、「脱・スーパー」をめざした新しいSMづくりが必要だと考えています。

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