首都圏を皮切りに2度目の緊急事態宣言に突入した1月、スーパー各社は整然と対応しました。前回のようにストック需要が爆発するといった混乱もなく、消費者も供給サイドも、ウィズコロナの生活に対する経験を確かに積んでいる印象です。スーパーの対応に関して言えば、緊急事態の直前と変わるところはあまりなかったというくらい、新常態が定着しているといえるかもしれません。ノーマルになりつつあるのは店舗の防疫体制であり、販促施策であり、オンライン強化の流れです。
防疫体制は万全のその先へ
防疫に関する各社の取り組みは、必要十分の域を超えて洗練に向かっているほどです。買物カゴの除菌作業は各社でルーティン化していますが、イオンリテールの一部店舗は設備を導入して自動化しています。「ジョキンザウルス」と名付けられたタワー型の機械が、カゴを1個1個、紫外線照射で除菌します。スケルトン仕様のマシンですが、開発した京都のメーカー「ニューネクスト」には、耐久性も考えて異なる仕上げにする意向もあったようです。ただ、こればかりは作業の様子を見せた方が、顧客の安心につながると思われます。先行導入店では、ボードも掲げて来店客にアピールしています。
各社、会計レジには透明のボードやシートの設置が一般化しました。レジ係はマスクに加え、フェイスシールドを装着している場合も多いです。顧客もマスクをしているので、従業員と顧客とで互いに声が聞き取りづらいといった弊害も出てきます。サミットではレジに集音設備を導入し、この課題の克服に努めています。安全を確保したうえで聞き取りやすさという快適を追求する、まさに安全安心の先を目指した工夫です。
集客の平準化は、密集回避よりもオペレーションの理想?
前回の緊急事態宣言では、チラシ販促は業界全体で止まりました。今回の対応は企業によって異なるようです。2週目にあたる中旬の状況は、チラシそのものをやめたところ、回数を減らしたところ、変わらないところ、それぞれです。これは週間単位のチラシであって、月間単位の販促は、すでに打ち出してしまった後ということもあるでしょうが、変わりなく実施している印象です。そもそも販促施策そのものが、ウィズコロナ対応に変わっているといえそうです。
コロナ以前のスーパーの販促といえば、「この曜日はコレが安い、だからこの日に来てください」的な手法が標準でした。ヨーグルトが安い日、ワインが安い日、もしくはポイント何倍の日、といったものです。それらの多くは、コロナをきっかけにやり方が変わりました。特定曜日ではなく、数日間の幅を持たせてみたり、一定期間で使えるクーポン券に切り替えたり、月間単位のEDLP施策も一段と広がりました。
新型コロナを契機に変わった販促施策の代表的なところで、イオンリテールは「火曜市」を廃止しました。アフターコロナになっても、復活する予定はないとしています。なぜかと聞くと、火曜市で作る売上げの山は、オペレーションの平準化を妨げる課題でもあったということです。
コロナ禍で3密対策を迫られると同時に、積年の課題解決に向けて販促の見直しに着手する・・・。イオンリテールに限らず、多くのチェーンがそのように考え、オペレーション負荷の軽減も含めて過度な売上集中を是正しようとしています。
買い方の多様化も新常態に
コロナ禍ではネットスーパー市場の様相も変わりました。多くの企業が、昨年の緊急事態宣言下では、急増した注文にキャパシティが追いつかなかったと振り返ります。その後、サービス導入店の設備増強や新規拠点の拡大を進めています。また、スマホアプリから注文できるようにして購入方法を増やしたり、ドライブスルー方式やロッカーの設置などで受け取り方も多様化しつつあります。西友と楽天、ライフコーポレーションとアマゾンジャパンのように、オンライン事業者とスーパーの提携も一段と深まりました。
ネットスーパー事業は収益面に課題を残すものの、導入店の売上は確実に上がるようです。ヤオコーの会員データ分析では、リアル店舗の購入額は下がらず、そこにネット売上がオンするそうです。それほど不思議なことではありません。ネットスーパーを提供していない間、顧客には別のネット通販で購入していた商品があったのではないでしょうか。
私自身もそうですが、食品でも日用品でも、リアル店舗で購入するものとネットで購入するものには違いがあります。すでに生活者は購入方法を使い分けており、リアル店舗の事業者は、オンラインの購入機会を用意しない限り獲得できないニーズがあると思います。ウィズコロナの環境は、オンライン購入のニーズを押し広げる方向に働いており、コロナ後も購入方法の多様化として定着することでしょう。
店で選びたい商品(スーパーでいえば生鮮や惣菜でしょうか)はあるけれど、何もかも店でしか買えないのでは不便と思うはずです。「スーパーで買物? そりゃ店もネットも必要でしょ」。それが新常態ではないでしょうか。