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【後編】JACDS・薬業3団体・JAHI年頭所感 日本薬業研修センター 中込和哉理事長「医薬品登録販売者の資質向上は社会の健康のカギ」

恒例の日本チェーンドラッグストア協会(東京都:以下、JACDS)と薬業3団体による年頭所感発表が2020年12月11日、東京都港区の「メルパルク東京」で行われた。各団体代表者と日本ヘルスケア協会(東京都:JAHI)の年頭所感をお送りする。後編は第21回JAPANドラッグストアショー実行委員長の江黒太郎氏、日本医薬品登録者販売協会会長の樋口俊一氏、日本薬業研修センター理事長の中込和哉氏、日本置き薬協会代表理事の有馬純雄氏、JAHIの今西信幸氏の年頭所感を掲載する。

日本チェーンドラッグストア協会
第21回JAPANドラッグストアショー実行委員長
江黒太郎氏 年頭所感

初のオンライン開催は国内最大規模のオンライン展示会

第21回JAPANドラッグストアショー実行委員長の江黒太郎氏

 第21回JAPANドラッグストアショーは、初めてのオンライン開催になる。

 新型コロナウイルス感染症の収束が見えないなかでは、リアル会場での展示会開催はリスクが高いうえ、セルフメディケーションを啓発していく活動の一環としても、関係するすべての方の健康をいちばんに考え、今回はオンライン開催することにした。ほかの業界でも、ドラッグストアショーほどの規模のオンライン展示会は例がなく、今回がオンライン開催での最大規模の展示会になる。

 今年のテーマは「ドラッグストアから未来の健康社会づくり~ライフスタイルの転換期 セルフメディケーション生活実現~」。ビジネスデーは3月17~18日、一般デーは3月13~21日までの9日間で、BtoB、BtoCを並行して行う。業界関係者、業界キーパーソンと触れ合う機会をはじめ、これまで継続してきたことが、オンラインでも継続できるよう準備を進めている。オンライン会議システムの「Zoom」を利用した商談ルームや接客ルームの設置、出展社やJACDS主催によるセミナー、薬剤師セミナーなど、多彩なセミナー配信も行っていく。加えて、オンライン開催ならではの価値、メリットなどを訴えていきたい。

 全国どこからでもアクセス可能だから、より多くの方が時間、距離に関係なく参加することができる。今までの幕張会場の場合、首都圏からの参加が中心になっていたが、今回は日本全国、さらに海外からも容易に参加できる。時間、距離の制約がなくなり、オンラインの接続環境さえあれば、店長、パート、アルバイトに関係なく、業界関係者が触れ合える場にもできると期待している。

日本医薬品登録者販売協会 会長
樋口俊一氏 年頭所感

意見提案できる組織へ款変更
会員拡大にも注力

SONY DSC

 2020年は新型コロナウイルスが世界中に猛威を振るい、多くの分野で価値観を一変させる出来事が起こった。オンライン診療・服薬指導もその1つだ。規制改革推進会議のワーキンググループでは、医薬品登録販売者不要論が再燃し、21年4月から店舗販売業における営業時間の半分以上は一般用医薬品(OTC)を販売しなければならないという「2分の1ルール」の見直しも行われる予定だ。また、政府は現行の医療保険制度の大幅な見直しを進めるなかで、セルフメディケーションの適正な推進も盛り込まれており、OTCの普及を図るための試案が20年末、厚生労働省から発表された。ところが、その際の資料には、セルフメディケーション推進の受け皿として、OTCの95%の販売に携わっている医薬品登録販売者の名前はなかった。

 こうした大きな動きに対し、20年12月、医薬品登録販売者の職能団体として厚生労働省の担当部局に、「コンビニエンスストア業界からのOTC販売規制緩和に対する要望書」および、「セルフメディケーションの適正な推進のため登録販売者、店舗販売業の活用に関する要望書」を提出してきた。協会の活動としても、医薬品登録販売者がセルフメディケーションの受け皿になり、新たな職域を拡大するために定款を改正し、これまでの医薬品登録販売者の資質向上の教育組織から、国会、行政、自治体等に向けた政策提言、ロビー活動などを行えるよう組織の見直しを図っているところだ。

 外部に向けて情報発信していくためには、より多くの医薬品登録販売者の方に会員になってもらうことが重要になってくる。日本チェーンドラッグストア協会はもちろん、医薬品登録販売者が従事する関係団体と連携し、現在、4万1000人の会員の組織拡大を図っていきたい。

日本薬業研修センター 理事長
中込和哉氏 年頭所感

医薬品登録販売者の資質向上は社会の健康のカギ

日本薬業研修センターの中込和哉理事長

 20年は新型コロナウイルス感染拡大により、社会全体が未曽有の危機に陥った。感染はいまだ拡大の方向にあり予断を許さない状況にあるなかで、今あらためて「健康と医療」について考えさせられている。

 ドラッグストア(DgS)等は、昨年来、マスク、消毒用アルコール、衛生用品、トイレットペーパー等の品薄騒ぎで大変な状況にあった。私たちは「健康と医療」について、いかに社会がDgS等の店舗を頼りにしているかをあらためて痛感した1年だったと思っている。それとともに、逼迫した状況の中でDgS等の店舗で働く医薬品登録販売者、薬剤師など皆さんの御苦労には頭の下がる思いだ。

 そのような状況を鑑み、20年は集合研修を通信研修やライブ研修等のリモート研修に切り替えて医薬品登録販売者資質向上研修を実施してきた。21年も新型コロナ感染の動向を見ながら、リモート研修に取り組んでいく。

 DgS等で働く医薬品登録販売者の方々の資質向上は、地域の人々の「健康と医療」に資するとともに、社会全体が健康であり続けるための1つのカギとなっているものと考えている。資質向上研修を担当する私たちの責任の重さも痛感している。20年10月からは医薬品登録販売者から関心の高い「0402通知」に基づく調剤補助業務を行う人向けのファーマシーアシスタント研修も開始した。

 本年も引き続き、さまざまな教育、研修を精力的に実施するとともに、薬業界の発展のための支援とサポート体制の充実を図り、一般用医薬品(OTC)販売に従事する専門家の資質向上とOTC業界の地位の向上に貢献していきたい。

日本置き薬協会 代表理事
有馬純雄氏 年頭所感

コロナ禍による配置薬業界の「光と影」

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 配置薬業界の代表として、今回のコロナ禍において、配置薬販売で何が起こっているのかを伝えておきたい。

 業界紙『薬日新聞』11月17日号に全国配置薬協会の「配置販売新戦略会議」分科会からの声が掲載された。その記事によれば、国内で新型コロナウイルス感染拡大が始まった当初は「影響は軽微」「むしろ配置販売の強みが再確認できた」とする見解が多かったが、第2波、第3波の襲来や、コロナ禍による経済活動の停止や停滞の長期化により、配置得意先の家庭の生計や企業の経営状態が厳しくなると、「売上ダウンなど配置販売業へのダメージ深刻化を心配する」配置販売経営者が増えているという。また「光」の部分としては、「得意先との絆が深まった」「各家庭を訪問して商品を届ける大切さを社員間で再確認でき、売上も20%程度上がっている」「よく使ってもらえる得意先ほど歓迎され、歴史の強みを再確認できた」といった声がある。

 一方で、「影」として「都市部より田舎のほうが見る目が厳しい」「点検後に配置箱の引き揚げを求められる」「得意先訪問へのプレッシャーがあって営業社員がダメージを感じている」などが挙がっている。今回のコロナ禍における配置薬業界への影響は、皆既日食の光環である「コロナ」の光と影に通じるものがあるように思う。

 皆既日食は、晴天からにわかに曇天に変わり、2分程度で、もとの青空に戻る。コロナ禍はその発症から1年強経過した。いずれ明るい世界に戻るのだろうが、以前と同じ青い空に戻るのかはわからない。不安はつきないが、世界が快晴の晴天に早く戻ってもらいたいというのが、今年の所感である。

日本ヘルスケア協会 会長
今西信幸氏 年頭所感

協会内に委員会を新設
大阪関西万博協力へ

日本ヘルスケア協会の今西信幸会長

 設立足掛け7年目を迎える2021年は、近々の公益財団法人化を視野に、これまでヘルスケア推進のために行ってきた検討や準備内容を、順次ヘルスケア産業の具体的な育成と推進の実践に移し、確かな成果に結び付けていきたい。

 年次活動としては、協会活動発表会および第4回日本ヘルスケア学会を開催(21年9月)するほか、研究開発事業(マスク健康影響調査等)や人材開発事業(管理栄養士のリカレント教育等)を中心事業として3教授(予防医療、介護、栄養)体制で発足した付属ヘルスケア研究所の活動、野菜・果物等の店頭POP表示(21年8月末までの期間に約30店舗で実施)およびモバイルファーマシーの平常時運用にかかわる実証実験などを実施する。

 また、企業間のビジネスマッチングの推進や会員向け特別セミナーの開催、協会内に委員会を新設し、経産省の25年大阪関西万博計画への協力、大学での講座の受託と実施(昭和女子大学グローバルビジネス学部「ビジネス開発研究」ほか)、「配置販売業部会」や「野菜で健康推進部会」等による、業界基準向上のための認証制度の拡大といった活動も行う。

 さらに、日本ヘルスケア学会、および日本ヘルスケア産業協議会の研究会・部会活動のほか、検体測定室ガイドラインの見直し、機能性表示食品の届け出の迅速化、生鮮食品に関する機能性表示の問題解決、「スイッチOTC」化の拡大等、ヘルスケア議員懇話会およびヘルスケア顧問会議等の活動も継続していく。

 当協会は、本年もわが国の優れた国民制度、皆保険制度を維持できるようにするため、生活者が実感し、成果の挙がる数多くのヘルスケア推進事業を行っていきたい。