アフターコロナの小売像その6 存在感増す“EC3強”
リアル小売と接近!? “EC3強”の戦略は
EC大手3強の当面の戦略を見てみよう
3社の出店者数は楽天が約5万、さらに、ZHDのヤフーショッピングが85万超。アマゾンは現在、出店店舗を公表していないが、最後の公表した2015年時点で17万8000店が出店している。なお、楽天の出店者数がヤフーやアマゾンと比べて少ないのは、初期登録費用など最低でも30万円近くのイニシャルコストがかかるためとみられる。
市場拡大に伴い、これら“EC3強”の出店者数も増えていくのは間違いない。そうした中、楽天やZホールディングスは、リアル小売との提携を拡大する動きを見せている。
その代表例が、楽天が推進する「楽天ポイント」によるリアル店舗の取り込み戦略だ。同社はかねてより、自社ポイントを発行することでリピーターを増やすとともに、リアル店舗と提携し、ポイントを利用できる場所を次々と増していくことで、楽天ポイントを軸とした「楽天経済圏」を構築している。また、ネットに販路を持つリアル小売や外食事業者が楽天運営のモールに出店するなど経済圏は相乗的に拡大しつつある。
Zホールディングスは、モバイル決済サービス「PayPay」を突破口に、有力サービスと次々と提携し、2019 年には自社運営の「PayPayモール」も立ち上げ、大手小売業と相次いで提携を結び、オムニチャネル的な施策も始めている。さらに、Zホールディングスは20年10月をめどにメッセンジャーアプリ大手のLINEとの経営統合を予定するなど、今後、各サービスの連携による経済圏構築が期待されている。
アマゾンはどう動く?!
その一方で、アマゾンの日本法人であるアマゾンジャパンは、今のところネットスーパー事業で食品スーパー大手のライフコーポレーション(大阪府)と提携しているに過ぎない。ただ、米国では、自社食品スーパーの展開計画が報じられるなど、リアル事業に乗り出す動きが観測されている。
アマゾンの食品スーパーが、傘下のホールフーズのノウハウを活用しているかどうかは定かではないが、今後日本でもリアル店舗、あるいはネットスーパー用のダークストアを展開する可能性はゼロではない。
「(我々はアマゾンの)やっていることに追いつかなければならない」
イオン(千葉県)の岡田元也会長の発言だ。この言葉どおり、イオンでは21年から英ネットスーパー大手、オカドとの提携によるダークストアスタイルのネットスーパーを本格展開する計画だ。イオンは、このネットスーパーを橋頭保に、既存のEC事業の巻き返しを図っていくとしている。「リアルからのEC拡大」の成否に注目が集まっている。
アフターコロナは、「店舗」や「ネット」といった“色分け”がない世界に突入していくと思われる。価格は当然として、利便性や周辺サービスで優位性を持てたECが支持を集めていくのは間違いない。