スリーエフ(神奈川県)とローソン(東京都)が資本業務提携を締結してから4年が経過した。一連のリストラ策や“ローソン流”の品揃え、店舗運営手法を導入したことが奏功し、2020年2月期に黒字転換を果たしたものの、収益性の課題は残されたままだ。ローソンとしては、すでに看板を替え、実質的にローソン店舗と変わらないスリーエフをいつまでも別会社として残しておく意味は薄い。コンビニ市場が転機を迎えるなか、スリーエフはどこに向かうのか。
提携後、業績は回復基調に
神奈川県を中心とする肥沃な首都圏で店舗展開しているスリーエフだが、大手チェーンとの熾烈な競争に巻き込まれ、2010年以降はたびたび最終赤字を計上しており、2016年4月にローソンと資本業務提携を締結するに至っている。
提携後は16年9月に合弁会社エル・ティーエフ(神奈川県)を立ち上げ、既存店を新会社に順次移管、ローソンとのダブルブランドである「ローソン・スリーエフ」への看板替えを行ってきた。スリーエフ本部では従業員の6割に相当する180人の希望退職を募り、経営のスリム化を図ったほか、ローソン商品の入れ替えなどにより店舗の競争力強化に取り組んできた。
その結果、20年の第1四半期(19年3~5月)の決算短信では、事業継続にリスクがあることを示す「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載を解消。20年2月通期の平均日販は対前期比1万8000円増の53万7000円と、ローソン並みの水準にまで伸長している。ローソンと提携する以前の平均日販が40万円台だったことを踏まえると、テコ入れは成功したと言っていい。
スリーエフは独自性を保つには
しかし、今後スリーエフが独自性を保持できるかは微妙なところだ。スリーエフが4月9日に発表した20年2月期通期業績では、営業利益3億円(前期は2億円の営業赤字)と黒字転換を果たしているものの、21年2月期の業績予想では減収・営業減益を見込む。
「ローソン・スリーエフ」では、スイーツの「もちぽにょ」や焼き鳥といった独自のヒット商品が生まれているものの、その数は少なく、ローソンとしてはスリーエフを別法人にしておく必然性はなくなりつつある。
セブン-イレブン・ジャパン(東京都)が2万店を超す規模になり、ファミリーマート(東京都)がユニー傘下だったサークルKサンクスを取り込みなど、コンビニ業界はローソンを含めた大手3チェーンによる寡占化の構図が鮮明になっている。
そうしたなかで、法人をあえて分けておくのも非効率であり、「ローソンは近い将来、スリーエフを取り込むのだろう」(あるコンビニOB)という見方は業界が一致するところとなっている。
平均日販80万円!? 「グーツ」業態に活路はあるか
スリーエフは上位集中が進むコンビニ業界で存在感を示すことができるのか。そのための、おそらく最終手段として期待されるのが、大手チェーンでは手掛けにくい「ニッチ市場」の開拓である。
現在、スリーエフは従来型のコンビニとは一線を隠す「gooz(グーツ)」業態を3店舗展開している。従来のコンビニではなかなか出しにくい、おにぎりやパンの「出きたて感」を訴求することをコンセプトとした店舗だ。
グーツでは、店内炊飯の米で提供するおにぎりや弁当、店内で焙煎したコーヒー豆による淹れたてコーヒーなど、従来の大量生産方式とは一線を画す、店内製造にこだわった提供する。品揃えも豊富で、店内で焼き上げるベーカリーは30~40種類、おにぎりは20種類以上をラインナップする。
グーツの事業化のメドはまだ立っていないとのことだが、神奈川県横浜市中区にある店舗の平均日販は80万円を超えるという。多店舗展開していくには、人材面やオペレーション面などクリアしなければならない課題も少なくないとみられるが、グーツはこれからのコンビニに求められる要件を満たしているともいえるだろう。
グーツモデルが普遍化できれば、コンビニの概念が変わる可能性もある。コンビニの転機に咲きそうなスリーエフの小さな芽が注目される。