「獺祭」がニューヨークで現地生産に挑戦! “手作りの哲学”を貫き世界へ

2025/08/20 05:10
小内 三奈

価格優先のアメリカ市場で「高品質・高価格」を貫く

 日本の獺祭はもともとアメリカでも販売されていて、日本からアメリカに輸出される日本酒の中で最大の売上を記録したという実績があった。だが販売開始から約1年、アメリカでの戦いは想像以上に厳しいという。

「アメリカでは品質よりも価格が重視される。酒に限らず、食品や衣類でも『これでいいのか?』と思えるような商品が売れ筋になっている。そうした市場において、獺祭は高品質かつ納得できる価格帯で勝負しようとしているが、なかなか苦戦しているのが実情だ」(桜井会長)

 アメリカの酒蔵はフル稼働すれば年間100億円相当の製造能力を誇るが、2023年の売上は約6億6000万円。2025年6月期の見込みでも7億4000万円程度と、10分の1に満たない水準にとどまる。

 現地での主要顧客は日本食レストランと中国の富裕層だ。コロナ禍以降は酒販店にも広がりつつあるが、「冷蔵保存をお願いしても、すぐ常温に戻されたりする。品質管理が課題」(桜井会長)なのだという。

 一方、価格はというと、現地販売価格は日本円で1本1万3800円程度と高い。これにはアメリカの物価高や製造コストが反映されているが、それでもあえて「安売り」はしない。

「私たちは“世界売上1000億円”という目標を持っている。アメリカでは薄利多売で30~40億円の売上を目指す道もあるが、それはやらない。むしろアメリカの酒蔵を世界における獺祭の“ショールーム”として機能させて、アメリカを起点にグローバル展開を進めていきたいと考えている。あくまでも高品質・高価格のスタイルを貫いていく」(桜井会長)

テイスティングに用意された獺祭BLUE
テイスティングに用意された獺祭BLUE

 明るい話題として、「Dassai Blue Sake Brewery」を訪れる見学客は確実に増えており、見学やテイスティングを通じてファンを獲得し始めているという。

「訪問者のうち、1割以上がその場で購入してくれる。思った以上に多くの方が訪れ、私たちの酒造りの哲学にも触れてくれていると実感しているところだ」(桜井会長)

「アメリカでは州をまたぐ酒類配送が難しく、整備に時間を要した」(桜井会長)というオンライン販売も、ようやく7月から本格的にスタートし始める。

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