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彷徨うコンビニその4 ローソンによるドラッグストア買収の可能性

ファミリーマート(東京都)がサークルKサンクスを取り込んでコンビニ業界2位に浮上し、3位に転落したローソン(東京都)に注目が集まっている。過去にミニストップ(千葉県)との経営統合が噂されるなど、ローソンの浮上策が注視されるなか、最近は「三菱商事らしい秘策が潜んでいるのではないか」という観測も飛び出している。

潰えたミニストップとの縁談

 ファミリーマートがユニー傘下だったサークルKとの統合を決めた際、真っ先に業界で観測が上がったのがローソンとイオン(千葉県)グループのミニストップとの経営統合だ。

 三菱商事はイオンの株式を約5%保有し、提携関係にあったことが観測の根拠だが、それは画餅だった。イオンは2018年12月、三菱商事との提携解消を発表、ローソンとミニストップをつなぐ線は極めて細くなった。提携解消の理由の一説には、三菱商事がイオンへの追加出資を迫ったからといわれている。

 総合商社でトップに君臨する三菱商事としては、傘下の食品卸の三菱食品と並んでコンシューマー産業グループの中核となっているローソンが、伊藤忠商事傘下のファミリーマートに後塵を拝している今の立ち位置は面白からぬ事態である。

ポプラ、スリーエフ統合は時間の問題?

 そこで巷間言われ始めているのが、ローソンが相次いで資本参加してきたポプラ(広島県)、スリーエフ(神奈川県)といったコンビニ下位グループの取り込みである。

 481店(20年1月時点)のポプラ、約350店のスリーエフを合わせると、ローソンの国内総店舗数は約1万5500店に達し、ファミリーマートの1万6500店に肩を並べる規模になる。実現は時間の問題、というのが大方の予想だ。

 「すでに出店競争の時代ではない」と大手コンビニの役員は話すが、「売上がすべてを癒す」とばかりに、菱食や明治屋商事などを統合して三菱食品を誕生させたように、三菱商事としては、規模の拡大が拠り所だ。

 しかし、いくら取り込んでも下位グループのコンビニ企業が立ち直り収益に貢献するかどうかは未知数だ。ファミリーマートのように、看板から運営の仕組みまでガラリと変えてしまえば、ポプラ・スリーエフの店舗収益の底上げを図ることはできるだろう。だが、コンビニにコンビニをプラスするだけでは、「コンビニの枠組み」から脱出できない。

次なる照準はドラッグストアチェーン!?

 そうしたなか、このところ業界で言われ始めているのが、ローソンによるドラッグストアチェーンの取り込みだ。

 ローソンにはドラッグストアとの提携で苦い思い出がある。それはココカラファイン(神奈川県)との経営統合を決め、ドラッグストアトップに返り咲く、マツモトキヨシホールディングス(千葉県、当時はマツモトキヨシ)との提携だ。

 当時のローソン社長は新浪剛史氏(現サントリーホールディングス社長)。片や、マツモトキヨシは個性派といわれた現会長の松本南海雄氏が社長として経営の舵を握っていた時代だ。両社長の個性がぶつかり合い、レジの配置の仕方から、仕入れ体制、運営の仕方まで折り合わなかったとされ、現在、提携は雲散霧消状態である。

 飽和を迎えたコンビニにとって、新しいフランチャイズパッケージの構築は至上命題となっている。では、ローソンにとってどんな秘策が考えられるのか。「それはヘルスケア分野の取り込みだ」と話すのは、ほかならぬ三菱商事の関係者である。

 ローソンはかねて一部店舗で「ヘルスケアローソン」「ケアローソン」を展開してきたが、いまだ試行錯誤を続けており、離陸したとはいえない。しかし三菱商事は医薬品卸大手のメディパルホールディングスと提携関係にあり、グループをあげてヘルスケア分野に力を注いでいる。

 医療用医薬品の取り込み、在宅医療、顧客の健康管理、クリニックモールというドラッグストアばりの機能を付加した新型コンビニフォーマットで巻き返しをねらっていても不思議ではない。また、ドラッグストア業界は再編が活発化し始めており、「三菱商事・ローソンと組んだ方が得策」と考えるチェーンが出てくる可能性は十分に考えられる。

 あるローソンOBも「ヘルスケア型の新しい業態を作り上げるのは非常に有効だ」と話す。ドラッグストアの取り込みは、ローソンにとって、業界で存在感を発揮できる「一発逆転」の秘策となるか。