新会社Retail-CIX設立! トライアルとNTTが描く流通×AIの最適解とは

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

トライアルホールディングス(福岡県:以下、トライアルHD)傘下のRetail AI(福岡県)と、NTT AI-CIX(東京都)は7月8日、 “連鎖型AI”を核とした新会社「Retail-CIX(リテールシックス)」(東京都)を設立した。発注・補充・物流・棚割といった各工程を一体で最適化する仕組みで、業界に根強く残る「ムダ・ムラ・ムリ」の解消をめざす。注目の会見内容を速報する。

スーパーセンタートライアル利府店外観
写真はスーパーセンタートライアル利府店

トライアルとNTTがタッグを組んだ理由

 Retail AIとNTT AI-CIXは7月8日、Retail-CIXの設立を発表した。両社がそれぞれのノウハウを結集し、発注や補充、配送、棚割りといった業務プロセスごとにAIの活用を図り、それらを相互連携させる「連鎖型AI」を提供。各工程が独立して最適化されるのではなく、連動して判断・調整されることで、店舗から物流までの一貫した最適化を実現する仕組みだ。

 トライアルHDは、自社開発のITを活用した無人・省人化店舗モデルを武器に、全国に300店舗以上のスーパーセンターを展開する。近年は、北陸・四国など未進出地域への店舗網を拡大するとともに、デジタル技術を活用した流通改革を推進。直近では西友(東京都)の買収でも耳目を集めた。

 一方のNTT AI-CIXは、高度なAI・IoT技術を基盤に、主に製造業や物流業界のDX(デジタル・トランスフォーメーション)支援を展開。今回の新会社設立を契機に、小売業界のサプライチェーン改革に本格参入することになる。

NTT AI-CIXの社家一平社長が代表取締役に就任
NTT AI-CIXの社家一平社長が代表取締役に就任

 今回設立されたRetail-CIXの資本金および出資比率は非公表だが、代表取締役社長にはNTT AI-CIXの社家一平社長が、副社長にはRetail AI執行役員の北川亮一氏がそれぞれ就任。27年の黒字化を目標に掲げ、30年には年間数億円規模の収益をめざす。

 設立の背景には、日本の流通業界に根深く存在する「ムダ・ムラ・ムリ」がある。日本の小売市場規模は164兆円(製造メーカーを除く)にのぼる一方、在庫管理や物流、販促活動などの非効率で生じるコストが40兆円にも達すると試算される。Retail-CIXは、AIの力でこれらの課題を解消し、小売業界全体の構造的変革をめざす方針だ。

「連鎖型AI」サービスの中身

 提供される「連鎖型AI」のサービスは、たとえば「発注最適化AI」「補充曜日最適化AI」「配送最適化AI」「棚割最適化AI」などだ。

 まず「発注最適化AI」は、各店舗の商品発注を高精度な需要予測に基づき最適化する仕組みで、導入済み店舗では、発注作業の平準化と効率化により、在庫コストの削減を実現している。

 「補充曜日最適化AI」は、棚のサイズや商品ごとの販売速度をもとに、棚補充に際して最適な曜日を指定するというもの。これにより、すべての棚を毎日補充する必要がなくなり、作業負担が大きく削減される。

 「配送最適化AI」は、曜日ごとのトラック台数や配送頻度を平準化し、物流・荷受けコストを削減するもので、すでに一部で導入が始まっている。

 「棚割最適化AI」は、現在、実証実験中の段階だが、利益率や販売傾向に応じてAIが商品の棚割を自動調整。売場の効率を高め、さらなる収益力向上をねらう。

 先行して導入された発注最適化AIと補充曜日最適化AIにより、トライアル店舗では在庫の約10%圧縮、店舗作業コストの最大20%削減といった成果がすでに実証されている。

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記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

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