出店フォーマット見直し、ポイント軸のマーケティング強化……日本トイザらスの新成長戦略とは

小笠原 玲 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

玩具専門店初の「dポイント」導入 顧客基盤の拡大ねらう

 出店戦略の見直しと並行して進めているのが、外部の共通ポイントサービスの活用だ。2411月からNTTドコモ(東京都/前田義晃社長)が展開する「dポイント」を全店舗で導入した。玩具専門店としては業界初の取り組みとなる。

トイザらスでマーケティング本部長を務める和田浩二氏
トイザらスでマーケティング本部長を務める和田浩二氏

 dポイントを導入したねらいは、顧客基盤の拡大だ。人口動態の変化、市場競争の激化により、トイザらスの会員者数は減少傾向にある。そこで、新たな顧客接点を獲得する手段として、外部の共通ポイントサービスを導入するに至った。数あるポイントプログラムのなかでdポイントを選んだのは、実店舗での加盟店数がとくに多く、実店舗の売上が大きい同社との相乗効果が高いと考えられたためだ。

 すでに導入効果もみられており、たとえば、dポイントとトイザらス会員を併用する顧客の客単価は、トイザらス会員のみの顧客に比べて約3割高い水準を記録。和田氏は「購買意欲の高いdポイント会員を通じて、実際の購買水準が高い層を自社会員に取り込むことが期待できる」と話し、今後は共同キャンペーンや販促施策などを通じて会員数の拡大をめざす。さらに、和田氏によると、ポイントを貯めるだけでなく使うケースも多いという。「玩具専門店で唯一のdポイント導入企業であるため、ポイントの消費場所として選ばれている。購買のよい循環につながっている」(和田氏)。

dポイント活用で3つのメーン層に「最適な戦略」を展開

 顧客分析にもdポイントを活用する。分析によって得られたデータは、新規出店や既存店改装の売場構成や品揃えの検討に加え、ベビー、キッズ、キダルトという3層のターゲット顧客に対する商品・プロモーション政策の策定にも役立てていく方針だ。和田氏は「この3層は関心や消費行動が大きく異なるため、単一のやり方では難しい。dポイントのデータを活用することでそれぞれに最適なアプローチができる」と話す。

 たとえば、買い替え需要の高いベビー層は、もともと来店頻度が高いため、ポイント施策を通じて継続的な来店を促す。一方でキッズ層は、年に数回の利用にとどまる顧客層が多いため、キャンペーンなどを実施して来店頻度の向上を図る。他方、これまで接点が少なく、非会員層が多いキダルト層は、dポイントのプロファイリング機能を通じて認知向上をめざす。

 和田氏によれば、現在は顧客データの蓄積と分析を進めており、新たなマーケティングモデルの構築を今夏までに完了させる計画。年末の本格運用を見据えている。玩具専門店は、クリスマス商戦が年間最大の繁忙期となる。最大の商機にトイザらスは事業改革の成果を発現させることができるか。

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記事執筆者

小笠原 玲 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

早稲田大学文学部(ドイツ哲学専攻)を卒業後、教育系の編集プロダクションで国語の入試問題の制作を担当。2024年、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。

休日の大半を台所で過ごすほど、無類の料理好き。得意な料理は、出汁巻き卵と切り干し大根の煮物。料理研究家の土井善晴氏を尊敬している。

趣味は、ミニシアターで映画をみること。音の大きな映画が苦手で、日常を切り取ったような変哲のない映画やドキュメンタリー映画を好む。見た作品のリーフレットを持ち帰り、コレクションしている。

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