出店フォーマット見直し、ポイント軸のマーケティング強化……日本トイザらスの新成長戦略とは
日本玩具協会の調査によると、2023年の国内玩具市場規模は対前年比7.1%増の1兆193億円となり、初めて1兆円を突破した。玩具をファッションやインテリアとして楽しむ大人、いわゆる「キダルト(Kid+Adult)」層の拡大により、少子化が進行する中にあっても市場成長が続く。一方、市場環境はEC事業者や家電量販店の台頭により大きく変化している。こうした状況下、国内玩具専門店の日本トイザらス(神奈川県/李孝社長:以下トイザらス)は市場の変化に対応するべく事業改革を進めている。
玩具市場は成長も「シェアを十分に獲得できていない」
玩具・ベビー用品専門店のトイザらスは、現在、玩具専門店「トイザらス」とベビー用品専門店「ベビーザらス」を合わせて148店舗(2025年5月現在)を展開するほか、ECサイト「トイザらス・ベビーザらス オンラインストア」の運営を行う。
国内玩具市場は好調に推移する一方で、ECや家電量販店などの台頭や、ベビー市場の縮小、コンテンツのデジタル化による物理的玩具の需要の低下などにより、トイザらスはその事業構造を抜本的に見直す必要性があった。同社マーケティング本部長の和田浩二氏は「玩具市場自体は拡大するなかで、われわれはシェアを十分に獲得しきれていない」と厳しく見る。こうした市場の変化に対応すべく、トイザらスでは事業の改革を進めている。
ロードサイドの大型店からモール内の小型店へシフト
事業改革の核となる取り組みの一つが、店舗出店戦略の見直しだ。従来の同社の新規出店は郊外のロードサイドに立地する大型店が中心だったが、近年はショッピングモール内などより集客が期待できる立地へ小型店舗での出店を進めている。なかでもとくに力を入れるのが、トイザらスとベビーザらスを併設した「サイドバイサイド型」。出産前~子供が10歳になるまでの長期間にわたり利用してもらうねらいだ。

一方、既存店は小型化やショッピングモール内への移転を進める。24年に約20店舗の改装を実施し、多くの店舗で売場面積をおよそ半分に縮小。あわせて、レイアウトや品揃えを見直し、収益性の改善を図る。和田氏は「今後は小型フォーマットを新たな店舗モデルとしたい。まだ試行錯誤の段階だが、標準化への道筋が見えてきた」と語る。
さらに、キダルト層の取り込みにも本腰を入れる。通常の店舗よりキダルト向け商品を充実させた店舗の出店を進めており、現在は都心部を中心に約35店を展開している。このほか、25年3月には同社初のキダルト専門店「トイザらスダイバーシティ東京プラザ店」(東京都江東区)がオープン。5月19日には「トイザらス京都河原町OPA店」(京都府京都市)をオープンし、関西への出店も開始した。今後は親会社のトイザらス・アジア・リミテッド(香港/レオ・ツォイ社長)と連携し、アジア市場も視野に入れてキダルト需要の開拓を進める方針だ。


自社ECのトイザらス・ベビーザらス オンラインストアは、顧客体験の向上や適正な価格設定、品揃え含め、プラットフォーム全体の再構築に取り組んでいる最中だ。ただ、和田氏は「たとえば、『買ったおもちゃを抱きしめて帰る』といった実店舗での体験は、ECにはない価値だ。ECの成長には実店舗の存在感が欠かせない」と話す。まずは実店舗の活性化に注力し、今後その流れをシームレスにオンラインストアへとつなげていく考えだ。