第114回 SCのテナントミックスは“生態系” リニューアルで気をつけるべきポイントは
リニューアルが“生態系”を壊す
テナントミックスとは、顧客のニーズの下にデザインされるものと解説したが、SCにおいて客の購買行動は一定期間を過ぎると固定化し、テナントミックスによる“生態系”が確立する。人によって行く店が決まり、その購買行動に合わない店舗は退店し、残った店舗同士の相互性と連関性が安定することで売上が軌道に乗る状況である。
ところが、前述の思い込みにより、大型テナントや人気テナントを入れる時が最も要注意である。それら強力なテナントが起爆剤となり、他の店舗に好影響が与えられればよいが、時にそれまで作られた生態系が崩れ、SC内に不協和音をもたらすことがある。

SC内の生態系を理解する
この現象は、外来種により湖沼の生態系が失われることに似ている。SC内のテナントミックスによる生態系は、開業時からそのテナントがあれば、その前提で生態系が作られるので問題は無いが、開業後、数年経ったところでの強力なテナントの導入はよい結果を生むこともあればそうでない場合もある。人気の大型カジュアル衣料店が導入されたことで、他の小さなカジュアル衣料店に正の効果もあれば負の効果となることもある。SCは、このことを理解した上で新たなテナントミックスを考えることで大切であり、新しいテナントの導入が、SCの生態系にどう影響するのか、その視点を持つことである。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
小田原市商業戦略推進アドバイザー、SCアカデミー指導教授、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒
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