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米・消費者調査「好きな小売業」で3位アマゾンを上回ったスーパーは?

英小売最大手のテスコ(Tesco)傘下で、顧客データの分析と、それに基づいたマーケティングビジネスを展開するダンハンビー(dunnhumby)。同社は米国において顧客調査を実施し、グロサリーリテーラーを対象とする「好きな小売業インデックス2020Retailer Preference Index 2020)」を発表した。そのユニークな内容を解説しよう。いまの日本のスーパーマーケットにも通じる“消費者ニーズ”が見えてくる。

7つの顧客ニーズとは?

 「好きな小売業インデックス2020」とは、今年18日に公開された調査データで、毎年1回行われる調査の3回目。全米のグロサリー小売業のうち、主要60社がその調査対象である。全米7000世帯の消費者を調査し、顧客が以下の7つのドライバー(顧客ニーズ)を通じて店舗をどのように認識しているかを明らかにし、それと小売業の財務状況の掛け合わせをスコア化したものだ。7つの顧客ニーズはそのニーズが高いものから順に、価格、品質(品揃えと店舗体験)、デジタル、オペレーション、利便性、スピード、リワード/割引となっている。

 今回、消費者が評価するポイントについて、かいつまんで以下に説明する。

・消費者が店舗を選ぶ上で最も重要なドライバーは「価格」
・だが、立地が良く、ショートタイムショッピングが可能であることを示す「スピード」とワンストップショッピングが可能なことを意味する「利便性」が2年連続で重要度がアップしている。
・上記の点で、地方に昔からあるHEB等が選ばれる傾向が強くなっている。その理由は(1)立地/アクセスのしやすさ、(2)店内での買いやすさなど。なおこれらの企業は、景気減速期においても対応する準備が整っていると考えることができる。

 まずは調査結果から発表しよう。上位5社の順位は、1位H.E.B(前回5位)2位トレーダー・ジョー(Trader Joe’s、同1位)、3位アマゾン(Amazon.com、同3位)、4位マーケットバスケット(Market Basket、同6位 マーケットバスケットのレポートはコチラ,5位ウェグマンズ(Wegmans、同5位)となっている。

 6位以下は、コストコ(Costco、同2位)、アルディ(Aldi、同11位)、サムズクラブ(Sam’s Club、同7位)、ウォルマート(Walmart、同10位)、パブリックス(Publix、前回ランク外)と続く。

 ここで気づくのは、トレーダー・ジョーやマーケットバスケットなど顧客データの分析をしていない企業が上位にランクインしている点だ。

 これについてダンハンビーのギオーム・バクーヴィエCEOは「顧客を理解することは必須である。とはいえ、そのためのデータ分析は必須かといえばそうではない。例えば、トレーダー・ジョーは、来店客に対して店内で顧客の声を直接聞き、それを元に意思決定を行っている。一方、ウォルマートはデータ分析により顧客を理解した上でECに注力したことで売上が伸びた」と答えている。北米ダンハンビーのホセ・ゴメス社長によれば、上位にランクインしているのは、①自分たちの顧客をよく理解し、②前述7項目においてバランスがとれていて、その上で、③顧客と良好な関係性が構築できている企業だという。

「価格」の評価 ウォルマートは意外にも7

今回ランキングでは、価格競争力が強いマーケットバスケットやアルディがランクアップした点も特徴だ

 7つの顧客ニーズについて1つずつランキングを見ていこう。まずは最も重要なドライバーである「価格」から。1位はアルディ、2位にはマーケットバスケットが入った。5位はトレーダー・ジョーでウォルマートは7位だった。

 「品質」ではウェグマンズが1位、2位にはノースカロライナ州に本部を置くグルメスーパーのフレッシュ・マーケット(the fresh market)がランクイン。総合スコア上位企業ではトレーダー・ジョーが4位、H.E.Bが9位に入った。

 「デジタル」ではアマゾンとアマゾンゴーがワンツーフィニッシュ。ウォルマートは5位につけた。欠品がなくお客が買いやすい環境を実現しているかを示す「オペレーション」ではHEBが1位、コストコ2位、マーケットバスケット3位だった。「利便性」ではウォルマートが1位、パブリックス(Publix)が2位、ここでもマーケットバスケットが3位だった。

 「スピード」では1位から順にアマゾン、アルディ、フェアウェイ(Fareway)。ウォルマートが上位にランクインしていない一方で、大型店のターゲット(Target)は前回19位から10位に大きくランプアップした。

 

 今回の調査は、顧客ニーズごとにあるいは総合的に、各小売企業が「消費者からどのように認識されているか」を理解できる非常にユニークなものだ。そして、この総合スコアが高い企業に共通することとして、バクーヴィエCEOは「自分たちの顧客が誰で、なぜ来店するのか、何が来店のために大事なことかを理解し、そのためにどんな強みを持たなければならないかを理解している。必ずしも万人受けしようとしていない」と語る。つまり、成功するための道は1つではないということだ。企業によって異なるのであり、それぞれの勝ち方があるのだ。

 日本の小売業も、まずは自社の立ち位置と顧客は誰なのか、何を望んでいるのかを理解することからはじめたい。ダンハンビーでは日本においても同様の調査を行いたい意向を示している。