上場廃止から6年、業績V字回復の「カメラのキタムラ」の現在

2024/08/21 05:59
ダイヤモンド・チェーンストア編集部 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア)
Pocket

高利益率も客数は減少、フォトプリント事業の今後

 利益率は高いものの利用者が減少しているフォトプリント事業では、1人あたりの単価アップが課題だ。キーワードとして安達氏は、「ギフト」と「コレクション」を挙げる。

 旅行や孫との写真をプリントしたギフト用途、あるいは子どもの成長過程や“推し”の写真を集めるといったコレクションニーズ。背景が透明な写真をプリントできる「クリアプリント」サービスや、仕上がりを確認しながらプリントできる「店頭ラボ」機能は、こうした需要にマッチする。フォトブックが人気のグループ会社、しまうまプリントとのシナジーにも期待できそうだ。

 さらには、「プリントのシーンそのものを変えたい」と安達氏。試験的に、ライブ会場などにキタムラが出向き、現地で「感動が生まれる瞬間に」(安達氏)即時プリントし即時グッズ化できるサービスを考案している。

フォトプリントで作成したクッション、トートバック、マグカップ

 フォトスタジオ事業は、誕生から節句、誕生日、七五三といった節目ごとの利用の継続性が明暗を左右する。顧客データに基づくCMRSNS施策、バナー広告などを駆使してマーケティングに力を入れるとともに、「写真館の第5世代を作っていきたい」と、安達氏は話す。

 「いわゆる“町の写真館”が第1世代、これをチェーン展開した当社の『スタジオマリオ』は第2世代。続く第3世代は、『ライフスタジオ』に代表されるようなオシャレ感のある写真館で、第4世代は出張写真館。世代が進むごとに写真の『画(え)』が変化している。新たな『スタジオマリオ』は、目線や動き、非日常感のある衣装を工夫することで、スタンダードな画のみならず新しい画も撮れる写真館をめざしたい」

 とはいえ、出生率が低迷する時代、フォトスタジオ事業が衰退業界であることは否めない。キタムラとしては、他事業併設型の店舗運営やシナジー効果を高めることで、全体の固定費削減と利益率向上をめざす構えだ。

 オムニチャネル構築やCRMの強化には、デジタルに強い人材が欠かせない。また、カメラ&リユース事業では経験と専門知識を持つ人材が求められる。よって引き続き、外部からの優秀な人材を採用したい考えだ。「査定経験者やデジタルに強い人材を集めて、デジタル領域と買取り領域を強化したい」(安達氏)としている。

1 2

記事執筆者

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

ダイヤモンド・チェーンストア編集部は、業界をリードする提案型編集方針を掲げ、小売業の未来を読者と共に創造します。私たちは単なるニュース伝達に留まらず、革新的なビジネスモデルやトレンドを積極的に取り上げ、業界全体に先駆けて解説することを使命としています。毎号、経営のトップランナーへの深掘りインタビューを通じて、その思考や戦略を読者に紹介します。新しくオープンする店舗やリニューアルされた店舗の最新情報を、速報性と詳細な分析で提供し、読者が他では得られない洞察を手に入れられるよう努めています。私たちの鋭い市場分析と、現場の細部にわたる観察を通じて、注目すべき店舗運営の秘訣を明らかにします。

ダイヤモンド・チェーンストア編集部紹介サイトへ

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態