上場廃止から6年、業績V字回復の「カメラのキタムラ」の現在
カメラの販売および買取り事業、フォトプリント事業、フォトスタジオ事業を展開してきたキタムラ(東京都)は2024年4月、店舗運営機能を分社化するかたちでカメラのキタムラ(同)を設立した。キタムラがグループ横断型のマーケティング施策やサービス開発を担う一方で、カメラのキタムラは店舗運営に集中する。カメラ・写真事業を取り巻く市場環境と同社の事業戦略について、キタムラ執行役員統合マーケティング本部部長安達友昭氏に聞いた。
「埋蔵金は3兆円」伸びが期待されるリユース事業に注力
カメラ販売とリユース事業、フォトプリント事業、フォトスタジオ事業を展開するキタムラ(以下、キタムラ)。同社は写真店として1934年に創業し、長きにわたりカメラ・写真に関連した事業を展開してきたが、高性能カメラが搭載されたスマートフォンの普及を背景に、主力のデジタルカメラ販売やフォトプリント事業が苦境に追い込まれた。2017年3月期決算では上場以来初の最終赤字を計上。2018年6月には上場廃止し、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(東京都:以下、CCC)の子会社となった。
しかしここ数年、同社は順調な回復を遂げている。CCCの関連企業となり、2023年3月10日には親会社のキタムラ・ホールディングスがプライム市場への上場を承認された。市況の悪化に鑑みて上場手続きは一旦取り止めとなったものの、「2024年3月期の業績は前年同期比を上回る水準で着地した」(キタムラの執行役員統合マーケティング本部部長の安達友昭氏)。
カメラのキタムラの事業ポートフォリオのうち、成長領域はカメラ&リユース事業だ。中古カメラやブランド時計、スマートフォンの買取り・販売を行うリユース事業は伸び代が大きく、安達氏によると「埋蔵金は3兆円」。全国約600カ所の「カメラのキタムラ」店舗での買取りサービスに加え、ECや郵送での買取りも強化している。
同社は元々、ECで購入した商品を店舗で受け取るBOPIS(バイ・オンライン・ピックアップ・イン・ストア)の利用率が高く、EC関与売上比率は現在も約6割にのぼる。安達氏は、「出張買取りも強化したい」と話す。2023年3月には「マルイ有楽町店」と組み、カメラの買取りと商業施設での購買を促すキャンペーンを実施した。今後も商業施設や高層マンションでの出張買取りを展開し、顧客接点の拡大に努めている。
カメラ&リユース事業の成長のカギとなるのが、LTV(LifeTimeValue:顧客生涯価値)の最大化だ。安達氏は、「キタムラでカメラを購入したお客さまがレンズを購入し、次は別のカメラを購入する。そして古いカメラの買取りをキタムラに依頼する。この好循環を生むことが理想。競争の激しい業界だが、当社の強みであるハイエンド商品の買取りを伸ばしつつ、ミドル層もカバーして裾野を広げたい」と意気込む。
販売面では、近年は「新宿 北村写真機店」をはじめとする旗艦店づくりに力を入れる。競合店を圧倒的する豊富な品揃えを武器に、各拠点でコアなカメラファンから新たな趣味を求めるシニア層まで幅広い層に訴求する。CCCが手掛けるVポイント連携も含めグループ横断型の顧客データを活用することで、顧客ごとの購入・買取りパターンに応じたCRMにも着手している。