業績絶好調のカクヤス、低価格競争に巻き込まれない独自の戦略とは?

構成:西岡 克(フリーランスライター)
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店舗間の距離を短縮する「密度向上型」の出店を強化

 カクヤスグループでは出店戦略において「密度向上型」「エリア拡大型」と2つの戦略をとっている。このうち、店舗の約9割を占める首都圏、東京23区では今後。店舗と店舗の距離を短くして商圏密度を高める「密度向上型」の出店戦略を強化する。

 現在、同社では1店当たり半径約1.2㎞圏内の顧客に酒を中心とした商品を届けているが、各店の配達能力は1時間当たり約4件。商圏が重ならないようにして出店地域を広げる「エリア拡大型」の戦略を取ると、5店で合計20件の配達が可能になる。

 一方、店舗間の距離を短くし、商圏が一部重なっても空白エリアができないように店を設ける「密度向上型」の出店をすれば、商圏は1.2㎞から0.8㎞に短縮され、配送効率が高まるため、各店の配達能力は1時間当たり4件から5件に増える。5店あれば合計25件の配達が可能になるというわけだ。

 配達距離が短くなれば、通常は軽バンや電動バイクを使用している配達もリヤカーや台車などを利用することで、女性やシニア層といった運転免許を持たない人材を採用しやすくなる。従来は注文を受けても断っていた空白エリアのお客も取り込める。

 一方、東京23区以外や神奈川県、埼玉県ではまずは「エリア拡大型」で順次、出店地域を広げていく。現在11店ある大阪府も宅配需要が伸びており、都市部に出店を進める。20年に地元有力業務用酒類卸2社(サンノー、ダンガミ)を相次いで買収し、23年10月に吸収合併した福岡県と長崎県の事業は時間をかけて事業を拡大する計画だ。

 コロナ禍で不採算店を一部閉鎖したが、業績の回復で収益が好転していることから、今後は店舗を増やす。なお、郊外型店「KYリカー」は23年3月に全店「カクヤス」に店名を統一している。

PB強化、酒類以外の商品の配送も!

 商品戦略では自前の顧客接点を生かして酒類以外の多頻度配達商材を拡大する。

 カクヤスグループでは23年から「お酒だけじゃない! カクヤス」キャンペーンを開始。米などの食料品、日用品、ペット用品、冷凍食品の即日配送を首都圏のほぼ全域で実施している。24年4月からは「王子店」「広尾店」など首都圏15店で、牛乳・ヨーグルトなどの乳製品の販売も始め、冷蔵での配送を加えた。

 酒類以外を配送の乗り出すねらいは、朝10時~夜10時の営業時間内における受注の谷間となる時間を埋め、時間帯別の人時効率を平準化することにある。「酒とつまみをセットで購入するなど買い上げ点数を高めることにもつながっている」と大河原学部長は話す。

 プライベートブランド(PB)も強化する。PBでは23年11月に発売した国産ウイスキーの「飛鳥山ピュアモルト」などヒット商品も登場している。商品開発は水やウーロン茶などの飲料は価格対応、国産ウイスキーなど原酒が枯渇している商品は商品軸で選ぶという具合に、価格対応軸と商品軸の両軸で進めていく考えだ。

カクヤスグループが展開するPB「Kprice(ケープライス)」

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