コロナ収束後も増収増益見込みの生協 今後の成長を阻む壁と直近の施策

宮崎 元(コープソリューション新聞編集長)
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進むAI活用、紙カタログの
送付者を選別しコスト減

 「DX-CO・OPプロジェク」の直近の取り組みとしては、宅配事業における紙カタログのコスト削減に取り組んでいる。この10年で宅配事業におけるインターネット注文数は2.5倍に増加している。しかし供給高ベースでは、カタログ注文が77%に対してインターネット注文が23%と未だ紙媒体が占める割合が大きい。     

 紙カタログによるコストは、OCR注文書やカタログの制作、紙代など、大まかな数字ではあるが組合員1人当たり年間1500円ほどの費用が発生していると言われる。食品や生活用品、乳幼児商品などカテゴリーやテーマ別に複数のカタログ媒体を制作し、配布していることがコストを重くしている。

 他方で、組合員からはカタログが複数種類あることで、「商品を探しきれない」「環境に悪い」といった声も上がっている。

 そこでDX-CO・OPでは、生活用品の専門カタログにおいて、AIを活用し、過去の注文履歴や属性から配布の「継続」「中止」を予測、判断。利用する可能性が高い組合員のみに配布することで費用対効果を高めるという試みを始めている。

組合員からも好評!
注文レコメンド機能

「DX-CO・OPプロジェク」
「DX-CO・OPプロジェク」のnoteでは「注文予測型レコメンド」機能の取り組みについて解説している

 AI活用では、宅配事業のネット注文時の利便性向上を図る施策として、「注文予測型レコメンド」機能の導入が地域生協で広がっている。

 これは個々の組合員の過去の注文履歴や志向にあわせ、注文しそうな商品をAIが予測し、注文画面に自動的に提示するサービスだ。商品検索の手間を省けると組合員から好評でコープデリ連合会(埼玉県)、コープ東北サンネット事業連合(宮城県)、東海コープ事業連合(愛知県)の会員生協が導入している。

2024年問題へは対応済も
ラストワンマイルへの懸念続く

 直近の課題である「物流の2024年問題」への対応では、日本生協連は自主行動計画を策定し、物流子会社のシーエックスカーゴ(埼玉県)において、入庫待機時間の短縮化、パレット積載改善、BOXパレットの活用などを進めている。

 生協と、その配送パートナー会社については、働き方改革関連法に定められる労働時間の問題に対して早期より対策を進めてきたことから、求められる条件はほぼクリアしており、直接の大きな影響はないという。

 しかし2024年問題では、競合他社とのラストワンマイルにおける労働力の奪い合いが進み、配達担当が今まで通り確保できるかといった懸念がある。また、国内全体の労働力の不足は24年度だけの問題ではなく、さらに深刻化の道を辿る。

 今後の事業を支えるための、若年層の組合員の加入推進と、生協の強みとなるラストワンマイル配送を維持するための人手不足対策。生協はこの2つの課題をどう乗り越えるか。打ち手を着実に進めつつあるも、抜本的な打開策はまだ見いだせていない。食品宅配市場を取り巻く環境が厳しさを増すなかで、このハードルを乗り越えることが、生協が同市場で勝ち組となる必須条件である。

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