第85回 売上増えずとも改装は必須 ショッピングセンターのリニューアル原資の作り方
ショッピングセンター(SC)は何年かに一度リニューアルを行う。その目的は、劣化した施設の改修、定期借家契約の満了に伴う退店と新店の導入、市場変化に対応したコンセプトの刷新など多岐に渡る。しかし、リニューアルするためには、投資および投資回収が不可欠な視点となる。リニューアルの内容によって投資額の大小はあるものの日常的に発生する費用とは別に多額の費用を必要とする。そのため、コロナ禍で止まっていたリニューアルが、いままた途中で止まる事例が多い。今回は、このSCのリニューアル投資について考えてみたい。
なぜ、SCにはリニューアルが必要なのか
なぜSCにはリニューアルが必要なのか。大きく3つの理由、ねらいがある。
1つ目は、構造劣化の改善と改修が不可欠だからだ。SCは構造物であり時間の経過と共に劣化する。劣化は事故につながり耐久性を低下させる。したがって構造劣化は施設にとって最大の敵であり、定期的なメンテナンスを必要とする。
次に、「エラーの改善」という目的も欠かせない。SC開発時、歩行者動線や車両の入出庫など検討を重ね設計するものの、開業後にいくつかのエラーに気づくことは珍しくない。回遊性が悪かったり、視認性が悪かったり、案内サインが足りず来店者が混乱したり、駐車場で車が壁に接触する箇所が出たり、などだ。これらエラーの放置は、顧客の不満となり来街者の低下につながるため、リニューアルで解消するのである。
3番目が「市場ニーズへの対応」である。新たな社会的要求や市場環境の変化により消費者ニーズは変化し続ける。例えば、コロナ禍によって定着したテレワークによる被服の変化やコワーキングスペースへの期待などSCはその変化への対応が求められる。
次にSCのリニューアルによる投資の種類について考えていきたい。
すでにあげた3つの狙いがあることを考えると、一定のスパンでSCはリニューアルを実施することになる。その内容はテナントの改変による建築設備工事、共用通路の美装化、ベビールームなどアメニティ施設の整備、吹き抜けの新設や増床など軽微なものから多額の投資を伴うものまで多岐に渡る。
リニューアル投資の考え方と投資回収
このリニューアルによる期待収益(テナント売上高、賃料)は次の通りである(図表1)。
ケース① 落ち込んだ収益をリニューアルによって回復させ、さらに増加を狙うケース。
ケース② リニューアルによって現状の収益の増加を狙うケース。
ケース③ リニューアルによって落ち込んだ収益を元に戻すことを狙うケース。
ケース④ このまま放置すると収益の減少が予想されるためリニューアルで防止を狙うケース。
以上4つがSCリニューアルでねらう主な戦略パターンだ。個別性の高いSCは現状や目的、目標によって複数のパターンが存在するが、ここに共通するのはリニューアル投資が伴うことにある。
このケースの中で、現状を上回る収益によって投資回収ができる①と②のケースはシナリオが描きやすい。ところが、
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